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いざ関空へ! 1-1
バスにしようか、電車にしようか、決めかねていた。
どちらでもいいわけではなかった。
関西国際空港までの往復路。
バスなら後戻りはできない。
電車なら途中下車ができる。
この期に及んで、会うことに迷っていた。自分から切り出したことなのに、逃げ出したくなった。待ち惚けを食わせても、何一つ文句を言われる筋合いのものでもない。
別に、私自身に非があるわけではない。
今回のことは、誰が見ても、誰が聞いても、誰が判断しても、必ず、絶対、確実に、相手に非がある。
この勝負、私の勝ちだ!
なのに、家を出るまで迷い続けていた。本当は不安なんだと思う。
結局、電車にした。途中で折り返せるように。
私はばかなことをしているのだろうか。
根本友美に相談をした。
友美は中学の同級生で、もうかれこれ三十年のつき合いになる。だから何でも話し合えた。心から本音で言い合えた。友美だからこそ私の味方になって励ましてくれると。そう思って打ち明けたのに。
「もう済んだ事じゃない!」
「今更会ってどうすんのよ!」
「相手に何を言わせたいのよ!」
「何もいいことないじゃないの!」
「そんなこと絶対やめなさいよね!」
友美の声が段々大きくなり、きつく釘を刺された。
今更……。言葉が頭を掠める。
でも、私は納得したかった。けりをつけたかった。文句の一つでも言いたかった。
初めて知る人。
初めて会う人。
初めて話す人。
身体が震えていた。それが憤りなのか、怖さなのか、戸惑いなのか、私には区別がつかない。やはり意味のないことをしているのだろうか。
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