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いざ関空へ! 7-2
彼女が視線を逸らした。俯いた。たたき込むなら今だ!
「最後まで言ってください!」
よし! いい展開になってきた。主導権はこっちにある。
「何故私だと」
「へぇっ?」
「どうして私の方へ連絡をしてきたのですか」
なんか先手を取られちゃった感じ。何をもたもたしていたのよ。それに返答を逸らしてきたかぁ。ならこっちから責め続けて攻撃するのみ。
責めて、責めて、一気に攻め込んでやる!
「あなたの手紙の方が長かった。好きな人に対しては伝えたいことが多くなる。だから手紙が長くなるのは当然でしょ! 違いますか?」
本当は彼女の手紙を全部読んでから私が手紙を書いたわけじゃない。手紙を全部読んだのは一月に彼女の返事が来てからだ。でも今この場で、「上海の方が近かったから」なんて馬鹿正直に言えるわけがない。いい加減な女だと思われるだけ立場が不利になる。もうこのまま押し切るしかない。
私は彼女の返答を待った。
「そうですね」
彼女がひと言で返答した。意外と、あっさり認めたのね。よし! 有利な展開になってきたわ。この調子で。
「あなたもいろんなことを伝えあってきたからですよね」
「えっ?」
一瞬の油断を突かれた。切り返しなど考えていなかった。私は……。私は夫に何を伝えていたのだろうか。すぐに答えることができなかった。
「どうかされましたか」
「あっ、いいえ」
「そうですか……」
負けちゃいけない。ちゃんと話さなきゃだめ。
「それから李さんの手紙は一方通行の内容ばかり。あなたの手紙は夫との受け答えが書かれています」
「それもそうですね」
「中味はただの交流ともとれますが、……いえ、意味深な言葉もあったかな? 忘れちゃったけど。何故か気になりました」
「いい勘してますね」
「ありがとう」
どうしてお礼なんか言ってんのよ。こっちのペースになって気を許しちゃった。だめだめ、ここからが大事なんだから。
「あのう」
「はい?」
「手紙を読んでいいですか」
「えっ?」
「この手紙、続きを読んでいいですか」
「どうぞ」
また逸らされちゃった。
彼女が読み終えた手紙をテーブルの左端に滑らせ、右側にある束から写真を置き去り、残りの手紙を手にして自分と向き合わせた。
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