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いざ関空へ! 7-5
(十二目、一九九七年六月十一日消印)
Dear 北原順一
素晴らしい本をいただきまして、どうも、ありがとう!
残念ですが、六月十日、火曜日の夜十時頃ですが、職場に電話をかけたら、もうお帰りになったと……。
淋しかったわ。
今週月曜日に、出勤の途中でバスを降りるとき、うしろの人がいきなり私を突き倒しました。
病院に運ばれたけど、両足が傷だらけになりました。
まあ、骨が折れなかったのが幸いです。
中国では順番ないです。
乗るでも、降りるでも、力で勝ちということです。
そうすると転んだら自分のせいです。
私の方が悪かったのです。
なぜなら私はこの人の前になったからです。
本当に筋が通らないけど、あの日、私は痛くて、血も出て、また口論もできなかった。
でも口論をしても無駄です。
皆、社会のルールを守らないからです。
それから街を歩けば路上への唾吐きなども見受けられます。
東京では考えられない光景です。
いまの中国は、ハードの方は欧、美、日など先進国と比べたらそんなにかわらないけど、ソフト(精神)の方は、マナーやエチケットなどは五十年も差があることです。
それを短時間で変わるのは無理でしょう。
順一の方は相変わらず、お忙しいですか?
順一はまじめ過ぎる。
仕事も大事だけど、身体の方がもっと大事じゃないでしょうか?
健康じゃなかったらなんにもなりませんよ。
身体を大切にしなさい。
将来の夢のため、楽しみのために、がんばって。
うっとうしい毎日が続きますが、ご自愛のほどお祈り申し上げます。
With love
Zhang lei
追伸
寂しいから伝えたいことが増えてきますね。また手紙を書きます。
(十三目、一九九七年八月十五日消印)
(バースディカード付スカート姿の子供の写真)
HELLO 北原順一
お元気ですか?
お電話どうもありがとう。
こちらはつつがなく過ごしておりますので、安心してください。
順一の『うた』を聴きながら過ごした東京での生活がなつかしく思えて堪らない。
楽しい思い出ありがとう。
謝々!
THANKS!!!
なお、しばらくは暑さがつづきそうですので、どうぞ身体を大切に過ごされますようお祈り申し上げます。
最後に心より
お誕生日おめでとうございます。
With love
Lei
彼女が最後の一通を読み終え、手紙を封筒へ仕舞った。
私は窓に目を向けた。外ではちょうど今、飛行機が離陸していた。
「あっ、旅立ち!」
彼女の言葉はとても印象的に思えた。
※【7話完】
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