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いざ関空へ! 8-3
きっぱりと言われた。何を勝ち誇った感じで答えているのよ。さっき変な性格分析なんかするんじゃなかった。これじゃあ、やぶ蛇じゃない。私の受け答えのすべてが空回りをしている感じだ。それも彼女に先手ばかり取られて。真正面から正直に訊いた方がいい。駆け引きにこだわらず、もう直球勝負するしかない。
開き直れ!
「夫から好きになったんですか」
「違います」
「じゃあ」
「私から好きになりました」
彼女が微かに俯いて恥ずかしそうに私から視線を外した。
「あなたから」
「はい。私の方が好きになり、二年目に」
「二年目って?」
「私が北原さんを好きになり、その思いは一年間ずっと心の中に仕舞っていました」
「一年間。じゃあ、あなたが一目惚れをしたんですか」
「そうじゃありませんが」
「じゃあ何ですか」
「何度かお話をしているうちに言葉だけじゃなく心も通じる男性だと思いました」
彼女が瞳を上げ、ぼんやり私を見て、再び視線を下ろした。
「それからどうしたんですか」
「告白しました」
「告白って、どこで」
「お店です」
「お店?」私の声に反応して彼女が顔を上げた。
「はい。北原さんが会社の歓送迎会でお店に来られまして、私は幸運にも北原さんの隣に座ることができました。そのときに告白をしました」
「他の人もいたんじゃ」
「小さな声で伝えましたから」
「小さなって、お店なんかで本気にするわけがないじゃないですか」
「そんなことはありません」
彼女の否定した言葉とその声からは、お互いが信じ合っている、といった確信に基づいた意志の強さが伝わってきた。
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