10人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「へぇ? 海斗にわかるの? 大人と乙女の恋心なんて? まだまだお子ちゃまの海斗には縁遠そうなのにぃ〜」
「バ……バカ。お前なぁ。俺だってもう中二なんだぜ。いつまでもお前と児童公園で遊んでた小学生じゃねーんだよ」
「へー、そうなんだ。私の知らない間に、海斗も成長してるんだねー」
「うるせーよ」
「あ……じゃあ、海斗にも実は好きな女の子がいたりして!」
「そんなの……、――お前には関係ないだろ」
「あれ? 否定しないんだ。海斗、否定しないんだ〜!」
「ほんと、お前、ウザいっ!」
そう言って海斗は右腕で顔を隠した。
なんだかしてやったりって感じで私は楽しい気分になってしまう。
でも、海斗に好きな女の子がいるんだ。
それは誰だろう?
そんなことを考える。
海斗が誰か別の女の子と手をつないで歩いているシーンを、なんとなく想像した。
そんな映像を思い浮かべると、胸の奥が、ギュッて締め付けられるみたいな感覚がした。
――あれ、何だろうこの感覚。
「でも、海斗くんは、どうして自分がリリアンヌだって、はるかちゃんに隠していたの? 本当ははるかちゃんがエレナだって、気づいていたんでしょ?」
私の隣に立つ、みやこが、海斗の顔を覗き込んで、尋ねた。
――うん、私もちょっと気になっていた。さっさと教えてくれたら、一緒に戦えたのにね。
海斗は両手を腰にあてて、溜め息を吐くと、諦めたみたいに口を開いた。
「だからさ。俺がリリアンヌだったって知ったら、――遥香、俺のこと、余計に男扱いしなくなるだろ?」
「え? なにそれ? 今更? 男扱いも何も、海斗は男じゃん? え?」
「だーかーらー、そういうことじゃなくてだなぁ……」
困ったように頭を掻く海斗に、みやこは一人得心したようにニシシと笑う。
「そういうことか〜。謎は全てとけましたよ〜」
みやこは一人満足げに、物語の中の探偵みたいに人差し指を立てた。
「え? 何? みやこ? 謎って?」
「教えなーい。きっとこれ、また新しい秘密だから。……ねっ、海斗くん!?」
嬉しそうな顔でゆらゆらとボブヘアを揺らす、みやこに、海斗は「もう、勝手にしてくれ……」と、頭を押さえた。
なんだかよくわからないけれど、今回の事件は一段落したみたいだ。
そして、私はリリアンヌと再会することが出来た。
先生が言うには、まだまだ、この学校の夢磁場は不安定らしい。
だからまた何か起きるかもしれない。
ユメコネクトして戦わないといけないかもしれない。
でも、次からは一人じゃない。私には仲間がいる。
「また次からもよろしくね――リリアンヌ」
私は改めて右手を差し出す。
海斗に。その心の中のリリアンヌに。
振り向いた海斗は、爽やかな笑みを浮かべた後に、その右手を私の手に重ねた。
「おう。よろしくな――エレナ」
「口調はやっぱり、リリアンヌとは違うのね」
「仕方ないだろ。あっちは女で、こっちは男なんだから」
それでもその握手は力強くて、やっぱりどこかリリアンヌの凛とした強さを感じさせた。
――それから同時に、こうやって海斗と手をつなぐのって小学生以来だなって、思った。
「じゃあ、事件解決記念と、二人の再会を祝して、喫茶店にでも寄り道しますかっ!?」
先に校門を出たみやこが振り返る。
「俺は別にいいけど? 遥香が『お金がないから児童公園でよろしく!』とか言い出さない限りはな」
「さすがに打ち上げで喫茶店に行くくらいの余裕はあるわよ! よーし、行こー! いちごパフェ食べるぞ〜!」
「……太るぞ?」
「むきー! やっぱり海斗は一言多い〜!」
「はいはい。行くわよ、幼馴染みカップル〜!」
「「カップルじゃないから!」」
最初のコメントを投稿しよう!