第7話 決戦の文化祭

4/48
1777人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
そうして文化祭の準備が始まった。 話し合いの結果、予算の計算や催し物の調整は普通科が、物品の調達やステージの設営は魔術科が担うこととなった。 適材適所。 それぞれの良さを活かした分担だ。 「にしても、また魔術科と合同なんて……」 と文句を垂れながらパソコンと向き合い資料を作成するアーシャ。 彼には非常に申し訳ないと思っている。 今回の合同文化祭が最も恨めしいのは彼に違いない。 クリントとの関係は修復されたとはいえ、魔術科からの見られ方は変わらない。 その上、文化祭への参加は何も生徒だけではない。 一般公開では、保護者のみならず、貴族階級以上の、いわゆる、国の重鎮達も来校する。 その数もレベルも、体育祭や魔術祭の来賓なんかとは比べものにならないだろう。 つまり、頭の硬い王家至上主義の魔術師たちがワラワラとこの学院にやってくるわけだ。 もちろん、普通科の保護者も来るため、それだけとは言わないが。 「せめて、私たちが卒業するまで待てないものですかね……」 まさか、その原因が俺だなんて、口が裂けても言えない。 続くアーシャの文句に罪悪感が拭えず、くだらない理由を並べて生徒会室から一時避難した。 彼に悪気がないのは十二分にわかっている。 どちらかと言えば、真実を隠しているコチラに非がある。 とはいえ、あの場にいるのも阻まれた。 出て行く俺を心配そうに見つめるアーシャの視線には、気づかないふりをするしかない。 今は、まだ。 とはいえ、時刻は放課後。 特に行く当てもないまま、中庭のベンチに腰掛けた。 「ここ、良いか?良いよな、今1人だもんな」 突然現れた聞き覚えのある声は、今にも煙草を吸い始めるのではないかと思えるほど、穏やかで、余裕のある大人の声だった。 相変わらず俺様だこと。 に会って以来なため、反応に困る。 「普通科の居心地が悪く感じるころか?ここは空気が澄んでいて良い」 本題に入ったかと思うとすぐ話を逸らす。 「それを聞きに、わざわざ転移してまでここへ?」 暇なんですね、とまでは言わないが、わざわざ伝えに来る内容でもあるまい。 「失敬な。これでも心配してるんだぞ」 とは言いつつも特に怒った様子もない。 ただ、俺も。 彼には聞きたいことがあった。
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!