第7話 決戦の文化祭

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(Side:なし) とある建物の、とある一室。 豪華な部屋の上座、玉座に座る男と、跪く男。 「報告いたします」 そう口にした男に対し、玉座の男はあまり興味無さそうに頬杖を突いて、その報告を聞いていた。 「ほお」 そんな男が、ある話に突然興味を示した。 「魔術を扱えるのに、普通科に、ねぇ。それは実に興味深い」 「名はシオン・レスナー。非魔術師の中では名を馳せている貴族、レスナー家の1人息子になります。が、どうやら実子ではなく、養子であるため、その素性は定かではありません」 玉座の男は脚を組み直し、口元に笑みを浮かべた。 「そうか。まずは、その生徒が我らが同胞として迎えるに値する人物なのか検証する必要があるな」 そう言うと、玉座の男は指を三本立てた。 それをみて、跪く男が言葉を続ける。 「魔力は申し分ありません。闇魔術の込められた魔術石を粉々にできるほどの魔術を使えます」 それを聞いて玉座の男は驚きを表すと共に頬を緩める。 「闇魔術の石を粉々に……?そんな破天荒なことを」 もう耐えられない、と言うが如く吹き出した玉座の男は、ひとしきり笑い終わると前髪を掻き上げて再び男を見据え、立っていた指を1つ折った。 「それも踏まえると、魔術界に関する知識は無いに等しいかと。我々のことも知らない様子でした。魔術科に属していない、と言うのもありますが、第一王子と面識があることを考えると、意図的に不都合なことから遠ざけられている、と判断する方が自然です」 「つまり?」 遠回りな言い方をしたからか、玉座の男は再び頬杖を付き、目を細めて男を見据えた。 男は唾を飲んで視線を落とし続ける。 「魔術科に属していないのが何よりもの証拠。彼には王制、もしくは、魔術界、魔術師に対して何かしらの不信感があるようです」 「そんなあやふやな情報で済ませようとしているのか」 玉座の男の言葉に、跪く男の額から汗が一粒落ちる。 「すぐに調査します」 男は慌てて更に首を垂れたが、玉座の男に気にした様子はない。 「まぁ、良い。で」 2本目の指を折り曲げたことで、玉座の男の立っている指は残り1本となった。
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