第7話 決戦の文化祭

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俺の仕事は、いわゆる客寄せで。 お盆に見立てた看板を持って廊下に立つ。 「立ってるだけで良いので!」 そう言った実行委員の指示通り、本当に立っているだけだ。 呼びかけや客引きをするぞ、と打診したのだが、全力で拒否られた。 「めめめめめ、滅相もない!!そんなことさせたら、隊長に葬られます!!」 顔を真っ青にして正直にそこまで言われてしまえば、無理に目立つわけにもいかない。 に、しても。 葬られる、って。 表現が面白い。 今度隊長に言ってみても良いだろうか。 いや、辞めておこう。 クラスメイトの彼が困るはめになる。 とはいえ、立ってるだけ、と言うのも案外疲れる。 特に時間の経過が遅くて仕方ない。 「シオン様、お似合いです///」 「ステキですぅ///」 そう言ってくれる生徒たちに笑顔で礼を告げ、ただただやって来る生徒たちを眺めるしかない。 「会長様に持ってきてほしかったなぁ〜〜」 「お外だと姿もあまり見えなくて萎えるね〜〜」 「並んでる間は目の保養だけどさぁ〜〜」 「やっぱり、これを機にお近付きになれるかも、なんて、夢のまた夢だよねぇ」 と入口と対になっている出口のドア側からそんな声が聞こえて来た。 本当、うちの実行委員はすごいと思う。 そんな反応お見通しで。 「お客様。会長は次のシフトで中に入りますので、是非またいらしてくださいね。ちなみに、副会長も、中ですからね」 出口に配置されたクラスメイトがそう言ってサッと優先券を渡した。 生徒たちは、パーーーッと顔を明るくして「次っていつだろう!」と楽しそうに去っていった。 これでリピート来店決定。 少々ズルのような気もするが、まぁ再来店が規則違反ではないため、ルールを逸脱しているわけではない。 “次”の時間を明確に言わないあたりも、また姑息さを感じる。 “次“の噂を聞きつけた生徒たちが、一か八かで列に並び、8-Sの待機列は行列となった。 これは、実行委員の策略が大ハマりしたな、と仕事を終え裏に引っ込みながら思う。 ちなみに、次の出番は最終ローテです。 それまでに俺目当てで並んでくれた生徒には申し訳ないが。 制服に着替えなければならないが、とりあえず休憩時間なためホッと一息。 窓から見える空は、雲一つない快晴で。 まさに文化祭日和だな、と感じた平和な今日この頃である。
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