1978人が本棚に入れています
本棚に追加
次の時間帯は見回りがあるため、燕尾服から制服に着替えて、教室を出る。
一息吐いたにも関わらず、相方はまだ来ていない様で、壁に寄りかかりながら行き交う生徒たちを観察することにした。
普通科と魔術科の配置がランダムなこともあり、廊下にいる生徒たちは普通科と魔術科が入り乱れている。
こうやって見ていると、普通科なのか魔術科なのかはわからない。
文化祭なだけあり、衣装を着ていたり、コスプレしていたりと、制服では無い生徒が多いからだ。
「お待たせしました」
そんな人間観察に勤しんでいると、横から声をかけられた。
「いや」
視線を隣へとずらせば、相方である魔術科副会長は一瞬目を見開きたじろいだ。
「どうした?」
その理由を聞けば、彼は言いにくそうに言葉を飲み込んだ後、意を決したように口を開いた。
「今、一瞬貴方の目が金色に見えたもので……」
いやいや、まさか。
「光の加減だろ」
率直な感想、というか、意見だ。
光の加減だろがアメジスト色が金に見えることは無いとは思うが、何かの間違えだろう、と軽く流す。
「そう、ですよね……。何を見ていたんですか?」
その場にいても仕方ないため、足を踏み出しながら会話を続ける。
「生徒たちの様子を「シオン」」
自分を呼び止めた声に覚えがありすぎて、そのままスルーしようとしたのだが。
隣の男はそうはいかなかったらしく、律儀に足を止め、振り返ってしまった。
はぁー、とため息を吐きたくもなる。
周囲の生徒たちは興味深げにコチラの様子を見ているし。
同情しろ、主に俺に。
「ここにいればいつかは会えるだろうと思っていたんだ。よかった、よかった」
なるほど。
もう少し早く人混みに紛れていれば、見つからずに済んだと言うわけだ。
一体何用だろう。
コチラは忙しい。
そんな目で彼を見たのだが、どうやら伝わらなかったようである。
「一緒にまわろう」
いや、無理。
今から見回り、つまり、忙しい。
「すみません、今から「構いません」」
今度俺の言葉を遮ったのは膝をついた魔術科副会長だった。
あ、コイツも魔術科だったわな。
と、そこで思い出し、遠い目をする。
察しろ。
王子様となんか回りたく無いだろ、どう考えても。
が、その願い虚しく。
近づいてきた王子様に手を取られた。
最初のコメントを投稿しよう!