第7話 決戦の文化祭

24/48
前へ
/302ページ
次へ
次の時間帯は見回りがあるため、燕尾服から制服に着替えて、教室を出る。 一息吐いたにも関わらず、相方はまだ来ていない様で、壁に寄りかかりながら行き交う生徒たちを観察することにした。 普通科と魔術科の配置がランダムなこともあり、廊下にいる生徒たちは普通科と魔術科が入り乱れている。 こうやって見ていると、普通科なのか魔術科なのかはわからない。 文化祭なだけあり、衣装を着ていたり、コスプレしていたりと、制服では無い生徒が多いからだ。 「お待たせしました」 そんな人間観察に勤しんでいると、横から声をかけられた。 「いや」 視線を隣へとずらせば、相方である魔術科副会長は一瞬目を見開きたじろいだ。 「どうした?」 その理由を聞けば、彼は言いにくそうに言葉を飲み込んだ後、意を決したように口を開いた。 「今、一瞬貴方の目が金色に見えたもので……」 いやいや、まさか。 「光の加減だろ」 率直な感想、というか、意見だ。 光の加減だろがアメジスト色が金に見えることは無いとは思うが、何かの間違えだろう、と軽く流す。 「そう、ですよね……。何を見ていたんですか?」 その場にいても仕方ないため、足を踏み出しながら会話を続ける。 「生徒たちの様子を「シオン」」 自分を呼び止めた声に覚えがありすぎて、そのままスルーしようとしたのだが。 隣の男はそうはいかなかったらしく、律儀に足を止め、振り返ってしまった。 はぁー、とため息を吐きたくもなる。 周囲の生徒たちは興味深げにコチラの様子を見ているし。 同情しろ、主に俺に。 「ここにいればいつかは会えるだろうと思っていたんだ。よかった、よかった」 なるほど。 もう少し早く人混みに紛れていれば、見つからずに済んだと言うわけだ。 一体何用だろう。 コチラは忙しい。 そんな目で彼を見たのだが、どうやら伝わらなかったようである。 「一緒にまわろう」 いや、無理。 今から見回り、つまり、忙しい。 「すみません、今から「構いません」」 今度俺の言葉を遮ったのは膝をついた魔術科副会長だった。 あ、コイツも魔術科だったわな。 と、そこで思い出し、遠い目をする。 察しろ。 王子様となんか回りたく無いだろ、どう考えても。 が、その願い虚しく。 近づいてきた王子様に手を取られた。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1978人が本棚に入れています
本棚に追加