宴の際の一時的なテンションは後の祭りを引き起こす

1/1
前へ
/16ページ
次へ

宴の際の一時的なテンションは後の祭りを引き起こす

オシャレな酒場に連れてかれ、またまた宴の時間です。 「サオリ、歳いくつだ?」 「16」 「おっじゃあ酒は飲めるな、つーか俺より年下かよ! ちなみに俺18な」 げっ、最悪、もしかしてさっきまでの態度謝れとか言わないよね? 「それなのに旅に出るなんて勇気あるな!」 ·····なんかもう、私って人を見る目がないクズだな。 「どっ、どうした! 暗い顔して!」 「ははっ、すみません·····なんかもう、私の事罵って下さい」 「わー! なんだお前! とりあえず飲めよ! ハッピーになるぞ!」 落ち込んだ私の隣に来て、酒を飲ませてくるアッシュ。 「うぇええ! にっがーい!!」 美味しくないけどグビっと飲んだら頭がパーリナイ。 気分が超絶気持ちいい。 なっ、なにこれ~頭がぽわぽわするぅ~ ぐるぐる頭が回ってでもなんか幸せな気分~なんかもう、全部どうでもいい~魔王とかもう知らね~ババア様達も知らね~! 私が旅に出なくてもアルミナは何とかなるとか言ってたし、幸せなスローライフを~! 「だっ、大丈夫か?」 「大丈夫ぶれす! もっと飲みたいれす!」 「そっ、そうか! おーい大将! この店の酒ありったけ持ってこい!」 「へいただいま!」 彼の一言で店がバタついた。 席の周りには酒樽がゴロゴロと運ばれてくる。 「びゃははは! 気持ちいい~! 生きてきて16年こんなに気分がいい日は始めてー!」 「おっ! そうか!」 「アッシュ君も気分いい?」 「あぁ、勿論だよ」 「へへへ、そっかー! いぇーい! 皆楽しんでるー!?」 「「「いっ、いえーい·····」」」 周りのお客さんたらノリが悪いなー なんでそんな引き攣ってんのよー 「サオリお前さん酒癖悪いのな」 「悪いのー? 私始めて飲んだからわかんなーい! でもこれサイコーね! あの家から吹っ飛ばされて始めて良かったって思えたー! きゃははは!!」 「きゃははって、お前さん、ただの酒だぞ?」 「だって、だって、だって! 気持ちよすぎて、嫌な事なんてどうでも良くなるんだもん!! 皆に虐められたことも、私が弱い事も全部! アッシュ君、ありがとう、今私超幸せ」 火照った体は自然に私の表情筋を緩める。 「·····おっ、お前」 「·····ん?」 そんな私を見て彼はバツの悪そうな顔をする。 「なんでもねぇ、それより、お前の旅の話を聞かせてくれよ」 「ん? あぁ、いいよー!·····でも、そしたら色々と·····まぁ、いっか! アッシュ君だし!」 感情のストッパーがもうかける事が出来なかった。 理性をなくした私は、この時面白おかしくこれまでの出来事を語ってしまった。 「私ね、ババア様に無理やり旅に出されたの! ランダムテレポートで飛ばされて! したっけ、モンスターばかりのジャングルよ! 必死に逃げたら、私を旅に出した元凶の姫がいるしさぁ! 姫様と一緒に行動してたんだけどそしたら魔王まで現れるし! 超大変!」 「あはは! なんじゃそりゃ! つかお前のばあちゃんどうしてサオリを旅に出したんだよ!」 「いやー、これ、うーん、言っちゃっていいかなー、でも、言ったら幻滅されるしなー」 「構わん構わん、いえいえ言っちまえ! どーせ今日限りだ!」 「そーだよねー! じゃあ言っちゃう! 私勇者一族の末裔なの!」 ※※※ 「お客さん! お客さん! もう閉店だよ! ほら起きて!」 「うー·····頭痛い·····」 あれ、私寝てた·····? やばい全然記憶がない 「お代はお連れの方から貰ってるから早く出てって!」 「すっ、すみましぇーん」 ·····ふらふらする、飲みすぎた。 お酒ってこんなやばい品物だったのね、もう飲まないようにおえええ、気持ち悪い。 ·····そういや、アッシュ君いなかったけど帰ったのかな。 悪いな、お金払ってくれて。 見ず知らずの私に色々してくれたのに、お礼も言えなかった。 「·····また会えるかな」 そうだ、私も別荘に行かなきゃ、滅茶苦茶遅い時間だけど大丈夫かな····· 「ん? ·····あれっ、あれっ、あれえええええー!?」 ないっ! 招待状とお金袋がない!! どっ、どこだ!? どの時だ!? 服着替えた時にはちゃんとおばちゃんがくれたし! いつ落とした!? いや落ち着け、酒で混乱してるだけだゆっくり、ポケットの中を1個ずつ見て·····ほら、くしゃって紙の音がした、なんだ、ちゃんとあるじゃない····· 「·····は?」 クシャクシャになってた紙を広げると、書かれていたのは『面白い話と金目のものありがとな!』とドクロマーク。 ·····は? はあああああああ!!??? いっ、いつだ!? あっ、あんときかああああ!!!! 思い出すのは彼の腕に抱かれたあの時。 思えば最初からおかしかった·····最初からあいつ、私の持ってるもんの価値分かってやがった!!! 「おのれ盗賊!! 許さん!!!!」 くっそー! あのレディが言ってた通りちゃんと気をつけないから! どーしよ、あれがなきゃ私のゴージャスな日常がぁ! きいいいいっ! 何がありがとなよ! ふざけんじゃねええええ! こんな紙切れ切り刻んで····· 「·····ん? なんだこれ」 紙をひっくり返すと、『俺的アジトの近道』と地図が書かれていた。 「·····ほぉう、面白い、ここまでコケにされたのは初めてよ·····絶許」 思考を失った私は、怒りのままその場所に向かった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加