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酔った時の記憶はだいたい恥ずかしい
「じゃあ、逃げるぞサオリ、これ着替え」
「あっ、ありがと·····って! この着替え誰がやったの!」
「·····そっ、それはそのーねっ、仕方なかったんだよ」
「てめぇか!! そういや、昼間もお前!」
「そういう文句は後で聞く! とりあえず着替えろ! 後ろ向いてるから!」
たっく、助かったら覚えてなさいよ·····
「いやー良かった良かった! サオリが俺と旅に出てくれて! 色々あったけどあそこで決断して良かった!」
「·····それって、もしかして私の酔ってた時の話?」
「おう!」
※※※
「はっ、はあああああ!? お前さん勇者一族!? ってことはあのフジワラ家の!?」
「そう! と言っても私落ちこぼれなんだよね、クソ雑魚いの、魔力も全然ないし、戦闘も駄目。出来損ないの私は皆から虐められてたんだ~死に損ないとか言われちゃったははっ!」
へらへらと笑いながら何言ってんだお前!
「だから、心も荒んじゃってさぁ·····、うわあああああん! ホント酷かったんだよ! マジで最悪! 思い出しただけで胃が痛くなる!」
酒に酔って感情的になるサオリ。
涙を目に浮かべて、酒を飲み続ける。
「それなのにさぁ! 旅に出ろって言うんだよ! 酷くない!? 滅茶苦茶、心折っといてさぁ! 私自信喪失してんだよ! だから誰にも迷惑かけないように、引きこもってようとしたのにさぁ!!」
「·····分かるよ、その気持ちお前も大変だったんだな」
彼女を見てると昔の自分を思い出す。
この組織に入りたての何も知らないガキだった自分を。
何も出来なかった俺は、お頭達に虐められながら頑張って生きた。
その甲斐あって俺は強くなって、認められるようになった。
「·····頑張っても認められないって辛いよな」
「うわああああん!? 分かってくれる? ありがとう、共感してくれたのアッシュ君が始めて、嬉しい」
「あっ、あぁ、うん」
俺の手を握って、綺麗な目で見つめてニコッと笑うサオリ。
まじでこの子チョロい子じゃん、最初の警戒心どこいった?
「あと聞いてよー! 魔王と戦った時も私怖くてなんにも出来なくてね! ビクついてたんだけど、アルミナがね、私の力を解放してくれて、凄い技をだせたの! 魔王を瀕死にまで追い詰めたんだから! ·····でも、それアルミナの魔力で私の力は何も無くて、ただの私砲台だったの! うわあああん!!」
「あーよしよし、泣くな」
·····天下の勇者一族の末裔にこんな普通の子がいたとは。
正直いってガッカリだぜ。
「ひっぐ、私だって本当はみんなみたいにかっこよく戦いたかった! 強くなって冒険したかった! でも、でも! 弱いから何も出来ない! 力が無いやつは夢も見れないの!! あああああああああ!」
彼女の叫びは槍の如く俺の胸を刺す。
やめろ、その言葉を選ばれた奴が言うな。
恵まれた環境で育てたお前が言うな、最初から諦めなきゃいけない場所に産まれた俺の前で言うな!
「本当は、色んな人と仲良くなって旅もしたかった·····あの島から出れなかったから友達もいないし、アルミナにも私自分の気持ち言えなかったし、あそこで怖くて踏み出せなくて彼女の言葉に甘えちゃった! 本当は私、貴方の役に立ちたかった! 自分の少しの希望を確実なものにしたかった! あああああああああ」
「·····サオリお前」
·····あーあ、俺を信用しきっちゃって、みろよ俺の胸で泣いてるぜ彼女。
本当はお前の持ってる書類と金を盗もうと近づいたのに。
そんな顔見せんなよ、勇者だろ?
お前はあの方の血が流れた勇者だぞ? そんな普通の人間みたいなこと言うなよ。
俺みたいなこと言うなよ。
「ひぐっ、アッシュ君ごめんね、こんな弱い勇者でごめんね、ガッカリさせてごめんね」
「·····謝んな! 別にいいじゃねえか!」
「ありがと、そう言ってくれる人にもっと早く会いたかった·····そうしたらあの場所でもう少し頑張れたのに·····すぅ」
最悪だあの時飯なんて誘うんじゃなかった、あの時もう獲物は奪ってたのに。
盗んだ奴に情なんか湧くなんて、俺は盗賊失格じゃねーか。
たっく、何に俺は期待してこいつと一緒にいたんだよ。
·····でも、いや、こんなこと考えたくないが、こんな希望を持つこと考えたくないけど·····
「おやっさん! 紙とペン! くれ!」
もし、こいつの言ったことが本心なら、俺の夢が叶うかもしれない。
こいつが俺を救ってくれるかもしれない。
それなら、俺はこの少ない可能性にかける!
紙に挑発するような言葉と俺の居場所を書いて彼女のポケットに戻す。
「あんがとよ! これお代だ払っとくぜ!」
「あいよー!」
※※※
「そんでお前は怒りに任せてアジトに来てくれたって訳だ」
「絶許」
「おっ、怒んなよ!!」
「怒るわ!! 盗賊達に襲われて奴隷になるとこだったんだぞ お前ええ!!」
「しゃーねーだろ! 想定外だったんだよ! 本当なら俺の荷物全部持って外で待ってる予定だったんだ! それなのに同僚はいるし、サオリは早く着くし、計画が狂ったんだよ!」
「そんなの知らないよ! でもいいの!? 本当にいいの!? アッシュを信じていい!? 本当に私を助けてくれるんだろうなあ!! 私ガチで弱いんだぞ! いいのか!? 旅するけどいいのか!? 私を捨てない!?」
「うるせぇな! いいんだよ! 俺がお前を守ってやる! だから一緒に歴史に名前刻むぞサオリ! 」
「よーし! 言ったな! その言葉嘘だったら承知しねぇぞ! 今からお前は私の盾だ! この私を旅の相棒に選んだこと後悔するなよ!!」
「ほんとお前黙ってろ! そのひねくれた考えも俺が矯正してやる!」
ギャーギャー言いながらも彼は扉の錠を外し私を外に連れ出した。
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