生きている意味を探しに行こう

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生きている意味を探しに行こう

「·····うっ、うーん」 「あっ、起きましたよアルミナ様」 「おおっ! 起きたかサオリ!」 少し固めのベットで私は目を覚ました。 全身の疲労がまだ抜けない。 体が滅茶苦茶痛い····· 「アルミナ様·····エリーさん」 「良かったー、目を覚まして」 「あっ、あのっ! あれって、倒せたの·····?」 私が魔王の事を聞くと、アルミナ様は少し気まづそうな顔を見せて、清々しく笑った。 「いやぁ、逃げられた、私の魔力を全部注いでも無理だった」 「えぇ·····嘘でしょ·····」 あんなに凄い技だせたのに·····って、あれっ? アルミナ様の魔力? もっ、もしかして····· 「あのーアルミナ様、それってどういう·····」 「あぁ、強制展開してお前さんの魔力回路を開いて私のと繋いで私の魔力を全部サオリに流し込んだ」 「·····アルミナ様? 強制展開ってあれ人の魔力を最大限使えるようにする魔法ですよね?」 「あぁ、あれは人の魔力量を最大限使えるように魔力回路を一時的に作り替える魔法なんだ、だから少し手を加えれば魔力の受け渡しも可能なんだぜ」 ·····少し嫌なことが頭に過ぎる。 うわーちょっと、調子乗ったのが恥ずかしい。 これもしかして、いや、もしかしなくても 「·····私すっごい雑魚?」 「ははは·····そーかも」 つまり、私の最大限の魔力が少なすぎたから、アルミナ様の魔力を私に寄越してあの最強魔法を撃ったってことだよね。 ·····うわっ、借り物の力を使っても倒せなかったとか私クソ雑魚じゃん! またみんなにバカにされる。 「ううっ、頭と心が痛い·····」 「悪いなガッカリさせて」 「せっかく覚醒したと思ったのに····· 」 「そんな簡単に覚醒するほどこの世界は甘くありません。まぁ、血筋というものは少しばかり必要にはなってきますがね」 「ははっ、ですよねー」 「まぁ、エリーの言う通りだ、精進して訓練することだな」 凹んでる私に彼女は優しく微笑んでそういった。 ·····でも、あの魔法初めて知ったな·····ババア様達も教えてくれなかったし、やっぱり私が普通の子だから教えてくれなかったのかな····· 「さて、サオリも目覚めたし私達は旅に出るよ」 「えっ?」 「えぇ、あのクズがこれ以上悪行を重ねぬ内に倒さなければ」 「あぁ、早く倒して世界救わないとな」 「·····そっか、そうだよね、アルミナ様達はその為に旅をしてるんだもんね」 「寂しいか?」 「うん·····すこしだけ·····ね」 でも私に引き止める義理はない。 「ははは! 大丈夫だ! また会える! それにだ、これからサオリは私の別荘で暮らすんだろ! 魔王倒したらすぐ帰ってくるから待ってろ!」 「えっ!」 「そういう話だっただろ! 私が迷惑かけたからその詫びだ! 帰っても苦労するだけならいっその事家出してスローライフを送れ! これ私の紹介書とお金だ! 楽に暮らせ!」 とても綺麗な笑顔で彼女は机にその二つを置いた。 「いいの·····本当に·····私っ」 「あぁ、私は無理強いはしない。君のババア様みたいに勇者だから戦えー! なんて私は言わん」 「·····そっ、それは、私が最強の力を持ってたとしても·····ですか? 私がクソ雑魚だからそう言ってるんですか?」 「そんな訳あるか! サオリが私の友人だから言ってんだ! 私の好きな人には辛い思いをしてもらいたくない」 「えっ」 目の中にあるポンプが勝手に忙しなく動いた。 心が熱くなって、ぼーっとして涙が自然にこぼれ落ちる。 今までかけて貰ったことのない暖かい言葉。 少し抱いた彼女達に対する使命感も、一族としての誇りも、そのたった一言で、全て忘れ去った。 貴方と一緒に私も戦うって言おうと思ったのに、その気持ちも彼女の一言が衝撃すぎて言えなくなった。 「死にたくねーだろ、サオリ」 「うん·····死にたくない」 「戦いたくもないでしょ」 「うん·····怖い」 「どんな選択をしても私は貴方を責めない。この世界の全員がサオリを責めても私だけは貴方を絶対に責めない、だから別に戦わなくていいよ」 「う、うわああああああ!! あ゛あああ! ひぐっ、ああああ!」 何も考えずに声を上げて泣いた。 弱くて、役に立たなくて、何も出来なかった自分に掛けられた 罵倒と頑張れ以外の言葉。 「·····じゃあ、行くよ、元気でな」 「お元気でサオリ様」 「うん、ありがとう2人共·····何から何まで本当にありがとう」 「いいっていいって! 私もサオリに会えてよかったよ!」 「うぐっ、あるびなざまぁ·····!」 「あー、泣くな泣くな! エリー鼻かみ!」 「はい、チーン」 ううっ、16歳になって鼻をかんでもらうなんて。 「じゃ、またな! サオリ!」 「はい! あっそうだ! 勇者一族に出会ったら、声をかけてあげてください。多分みんな姫様達の力になるから。あの技も私より上手く使えると思いますし·····あれっ? でも皆なら知ってるかな、アルミナ様の力を使わなくても·····」 「あーはいはい! わかった、わかったから凹むなサオリ! じゃあな! 帰ってきたら祝勝パーティだ! いいな! あと様付やめろ! お前は私の親友なんだからな!」 「びゃあああああ!! あるびなああああ!!」 動きにくい体をベットから起こしてアルミナに抱きついた。 「はいはい、次会う時には泣き虫直しとけよ」 笑いながら彼女は私の頭を撫でて部屋を出て行った。 一息ついて泣き疲れた私はまた深い眠りへと落ちた。
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