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アルミナ様のこぼれ話
「·····本当によかったのですかアルミナ様」
「えー? なにが?」
「彼女を旅に連れ出さなくて」
「はは、痛いとこ突いてくるなエリーは」
「当然です、私は貴方のメイドなのですから、逸らしたい現実を突きつけます」
少し不機嫌そうな彼女はため息をついてそう言った。
「·····ようやく見つけた真の勇者なのに手放して良かったんですか? 」
·····ははは、やっぱそうだよなぁ。
ゲートオブヘブン、あの魔法は勇者一族だけしか使えない魔法。
もっと詳しく言うと、勇者の純粋な血を引くものしか使えない魔法だ。
この世界において血の繋がりは魔法を引き継ぐ上で重要なものであり、あの魔法は初代勇者にしか使えない魔法だった。
それを引き継ぐには同等の種族の交配が条件になってくる。
その為、封印の魔法は彼の死後ほぼ誰も使えない状況であった。
その理由は彼の生い立ちにある。
初代勇者、フジワラ・マコトは異世界から来たテンセイシャだった。
神によってこの世界に新たな肉体を構築させたという特殊な出生の人間は彼しかいなかった。
だかしかし、ある日他にもテンセイシャが現れた。
そのテンセイシャは彼の心を射止めて結ばれた、聞けば他にもテンセイシャはいるという。
そのテンセイシャの血を引く者が上手く、くっ付いて出来た子孫がサオリと言うわけだ。
勇者の血を引く純血は彼女しかいない。
つまり、彼女しか魔王を倒した魔法が使えないのだ。
「あの子にどのようなトラウマがあるのかは知りませんが、鍛えれば誰にも負けない最強の·····」
「そういう可能性があるだけでしょ、本人が嫌がってんだそれを無理強いさせちゃダメだ。····アイツらに彼女のこと任されたんだ、苦しい思いをさせたくない」
「まったく私情じゃないですか、私達だけであの魔王を倒せるんですか?」
「あったりまえだろ! こう見えて世界最強の姫だぜ!? そしてエリーはその最強の右腕! 私達なら世界を救える!」
キラキラした瞳でそう言うと彼女は諦めたようにくしゃっと笑った。
「あー、そうですね!」
「そうだとも! 勇者の力など私達の保険! あの封印の魔法が使えなくても私達は強い! それに私が倒さなきゃ責任取れんしな!」
「·····えぇ、そうでしたね、分かりました。では張り切って参りましょうか!」
色々と後悔はある。
でも、世界の都合で誰か一人を不幸にしちゃいけない。
·····これまでの人生が酷かったんだもん、もう絶対絶望させたくない。
「アパちゃん! またね!」
思い出すのは昔の記憶、たった1人の親友の為私は世界を裏切った。
まぁーかっこいいこと言ってるけど、クソみたいな我儘で世界滅ぼしかけてんだけどな!
まぁ、やっちゃったことは仕方ない!
私が全部解決しねぇとな!!
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