憧れのスローライフ!

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憧れのスローライフ!

「さて、どうしよう」 フジワラ・サオリ、現在所持金10万ルミー。 それに皇族の施設に入れる招待状を所持。 ·····完璧なスローライフが送れてしまう·····! 魔王が自国の皇帝を瀕死状態まで追い詰め、人間達は恐怖に怯えている今日この頃。 そんな中何にも不自由なく、ゆったり暮らせてしまう資格を得たなんて! えっ、魔王に侵略されたら終わりだって? 大丈夫! 大丈夫! うちの一族強いもん! どうせ誰かあの術使えるようになって倒すっしょ! 何にもできない私が旅に出たって死ぬだけだし! まぁ、あの人達は私が居なくなって嬉しいだろうけどさ····· だけど、苦しんで死にたくないし! 家も出たとことだし、私は私でひっそり楽しく暮らすんだい! 待ってろ! スローライフぅうううう!! そんな思いを胸に抱き、たどり着いた場所は皇族家御用達のリゾート地、砂と海の街デザトリウム。 「すっ、すっごーい!」 青い海に白い砂浜。 安直だがリゾート地に相応しい場所だ。 涼し気なエスニックスタイルのお姉様方。 まさにここはパラダイス。 「そっ、そうだ、アルミナ様の別荘探さなきゃ」 通りかかったお姉様に声かけ、地図を見せて場所を教えてもらい頭を下げる。 「ありがとうございます!」 「なんもー、それよりその招待状隠した方がいいよぉ、この街には恐ろしい盗賊がいるけん」 「ひいっ!」 慌てて招待状をコートのポッケにしまった。 げぇええ! なんでこのリゾート地に盗賊がいるのよ! 「ありゃー怖がらせてしもたかー、ここは観光地やから無知な旅人を襲う悪い現地人がおるんよ~」 おるんよ~じゃねーよー! あっれれ~? おっかしいぞー!? アルミナ様滅茶苦茶優雅な暮らしができるって! 「まぁ、皇族の別荘があるとこは治安良すぎるから問題ないわなぁ~、パペット家の影響は凄まじいねんなぁ」 「はぁ、なら大丈夫か·····」 「そこまで歩くのは大変やんね、馬車で行くがよいよ、あそこにターミナルあるけんチケット買ってき」 「すみません、ありがとうございました」 「なんもよ~」 方言ガールに別れを告げて、ターミナルへ。 カウンターでチケットを買って、30分後に来る馬車を待つ。 少し小腹がすいたので、近くのマーケットに向かった。 「はわぁ~すっご~! たんのしそー!」 フレッシュなフルーツ、南国風の肉料理、謎の仮面や怪しげなマジックアイテム。 活気のある商人たちがイキイキしながら観光客に進めてる。 「フレッシュジュースください!」 「はい毎度! お嬢ちゃん旅人かい?」 「えぇ、まぁ、そんなとこです」 「もしかしてお嬢ちゃんも勇者に?」 「いやーそれはそのー」 「大変だよなぁ、アルミナ様も旅に出たって言うし、魔王もいつ攻めてっかわかんねぇしなぁ」 「えっ? ·····あのー知らないんですか?」 「何がだい?」 「いえ·····何も」 ·····もしかして王都が落とされたってこと誰も知らないの? じゃないと、こんなに楽しそうな雰囲気だせないよな。 ということは、フジワラ家が上手いこと隠蔽したのか····· 「うぉーい! オヤジぃ! 儲かってっか!?」 「おぉ! アッシュ! 元気か!? 久しいな! なんか買ってか!?」 「今日はいいや! 金ねぇし! 珍しくこの店に客が入ってたから顔出しただけだ!」 ジュースを飲んでいたら、金髪の少年が店の親父さんに絡みにやってきた。 ·····あーなんか苦手なタイプの客だわー、早いとこ退散退散。 「あっ、あの! お金! お会計!」 「おっ! すまんな嬢ちゃん! 100ルミーな!」 「はっはい! あっやばっ!」 その場を早く立ち去ろうと気持ちがはやまったせいか、手元が狂い、金袋からお金を落としてしまった。 「ぎゃー!!」 「うおっと、大丈夫か?」 地面に這いつくばってお金を拾ってると、金髪の彼が心配しながら拾うのを手伝ってくれた。 人は見かけに寄らないんだなーと思いながらそそくさと小銭を集めた。 「すっ、すみませんありがとうございます」 「おー気にすんな旅人さん·····ところでまたポッケからなにか落ちそうだぞ?」 ポッケに無理やり金袋を入れたせいで招待状がグチャグチャになってポッケから落ちそうになっていた。 「ぎゃー! すんません! あの、ありがとうございました! さーせん!さよなら!」 恥ずかしくなって、私は急いでターミナルへと走った。 「·····なんだあの女」 「ドジっ娘なんじゃないのか?」 「ははっ、違いねぇ、なんせあんなもんを持ち歩いてんだ」 あばばばばば、この中身バレてないよね·····? もし悪い人だったら、どーしよー!!
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