キラキラ煌めく馬車の旅

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キラキラ煌めく馬車の旅

「パルメザン行き馬車もう着いてまーす!」 「のっ、乗りまず!!!!」 「ど、どうぞ」 息を荒くした私を見て、引きつりながら、御者は私を中に入れた。 ううっ、せっかくジュース飲んでリフレッシュしたのに····· 「お客さん、もう、出します?」 「うい! 出してください! 早くここから連れ出して!」 「あっ、はい! 承知しました!」 私にビクビクしながら、彼は馬を鞭で叩く。 うわー、この人に完璧おかしな人だと思われてるよ。 「すんませーん! その馬車待ってー!」 呼び止められ馬車は急停車。 まったくなんなんだ、出発してんのがわからんのか····· 「困りますよお客さん! 急に飛び出てこないでください!」 「困るのはこっち! チケット買ったのにそれに乗れないんだから! 時間ギリギリでも前良かったじゃん!」 「あーすんませんね! お客さん、急遽相席だわ! 悪く思わんでくんろ!」 げぇえええ、相席いいい!? 嫌だなー、密室で知らん人と2人ってちょっとなー、でも仕方ないかぁ····· 「いやー、すんません! 急いでたもんで!」 「いっ、いやい·····!?」 ぎょええええええ!!? なっ、なんであの金髪がここに!? 「おっ、旅人さんまた会ったな」 「あっ、あははーどうも」 最悪だ、お前と一緒にいたくないから逃げたのになんでまた一緒になったんだ! 見るからにチャラそうだし、あんまり関わりたくないんだけど! 「お嬢さん、どっから来たんだ?」 「えっ、えーっと王都の方から」 「はぁえええ、そりゃまた大変だったなぁ、王都ったら、魔王が攻めて来たんだろう?」 「えぇ、そうなんですよー」 「アルミナ様が追っ払って、倒すために旅に出たって聞いたけど」 「はい、そうなんです。滅茶苦茶強いんですよーアルミナ様」 「えっ!? お前さん姫様が戦ってるとこ見たことあるのか!?」 おう、すごい食いついてくるなこの少年。 「えっええ、まぁ·····ちょっと」 「まじかよー!! あの姫さんどんな戦い方するんだ!? 」 「剣で敵を圧倒する的な感じで、炎を剣に纏ったりして」 「それでそれで!?」 ちょっ! 近い近い! 目を輝かせながらこっちに近づかないで! 「おわっと! おきゃっさん方! しっかり捕まっててくんろ!」 「「へっ?」」 ガターン! 何かを踏んだのか、その衝撃で座席が揺れる。 突然の事で何も準備をしていなかった私達、その振動にされるがままに。 「おええぇ、気持ち悪うぅ」 「ぎゃー!! 人の膝の上で吐かないでください!」 「おっ、俺、乗り物酔いが·····さっ、さっきから我慢してて·····」 「おいいい! だったら大人しく座ってろよ! 話しかけてくんなよ!」 「そうでもしないと、ごまかせなくて」 どんどん顔色が悪くなってくる少年。 「ぎゃー! 運転手さん、止めてー! あっ、少年! 窓! 窓から吐いて! 一旦膝からどいて! 起き上がって!」 「もっ、もう無理、限界·····」 「ぎゃあああああああああああああ!!!!」 私の悲痛な叫びが森に響いた。 うえええん! 最悪! 服これしかないのにぃ! 吐瀉物に塗れた私と、安らかな表情の彼。 尋常ではない殺気が私から出ているのが分かる。 「おっ、お客さんすんません! パルメザンに着くまで我慢してくんろ!」 「でっ、出来るか!」 「ず、ずびばぜん、服は弁償しますんで·····」 「そういう問題じゃねー!!」 ううっ、やっぱりこいつ疫病神じゃん! せっかくのスローライフがあああ!!
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