縁は中々切れんザマス

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縁は中々切れんザマス

「うーん! 気分爽快っ! いやぁ! 悪かったな! お嬢さん!」 「許さん」 馬車から降りた途端元気になる金髪野郎。 服弁償して貰ったら直ぐに縁切ってやる! 「あはは、ごめんって、何でも買ってやるからさ機嫌直してって」 「絶許、なんで私がこのジャージを気ないとならんのじゃ」 馬車を降りてから、ターミナルの従業員が着替えとして持ってきた赤のジャージ。 クソダサすぎてオシャレな町を歩けない。 「大丈夫! 大丈夫! お嬢さん可愛いから!」 「なっ! そんな言葉で!」 そっ、そんな、可愛いだなんて! 安っぽい、褒め言葉で私を褒めたって! 「そんな! 嬉しくなんかないんですから! でへっ!」 「おーいお嬢さん、顔横にしてもニヤついてんの分かるよー」 げっ、バレた! 「とっ、とりあえず服を買ってください! 話はそれからです! そこの店でいいですから!」 近くの服屋を指さしてそこに入った。 「あんらぁー! 何事ザマス! 芋ジャージなんかガールフレンドに着せちゃって!」 「違います、フレンドでもないです」 「あはは、ちょっとアクシデント汚しちゃって。おばちゃん彼女に似合う服を」 「まぁ! じゃあお嬢さん覚悟はいいザマスか?」 「えっ、げっ、なっ、何を·····」 オシャレオバの目が光る。 そっ、そのメジャーで私に何を····· 「ゆくザマス」 「ちょっ!? ぎゃああああああ!!! ちょっ! 見ないでえぇぇ!!!」 メジャーを巻き付けられた私の姿を見て顔を赤くする金髪。 てめっ! あとで覚えてろよ! 「終わったザマス」 何いい汗かいたみたいな表情してんだババア! 腕で額の汗拭ってんじゃねえ! というか、終わったって何が····· 「うわっ·····まっまじかすげぇ」 「ちょっ! ジロジロ見ないでよ変態!」 「いやっ、違っ! 鏡見ろ!」 「へっ·····」 そこに映るのは、冒険者風の服を着た私。 黄緑のコートに白い服、動きやすい茶色の短パンに、ロングブーツ。 あっ、あれっ!? 芋ジャージは!? 「お気に召したザマス?」 「どっ、どうなってるの!?」 「おや、知らないんで入ったザマスか、私は服飾魔法の使い手ミス・メジア、私のメジャー魔法は巻き付けた相手に相応しい服を着せる魔法なんざます。はいこれ芋ジャージ」 「あぁ、どうも·····」 「あとお代に応じてグレードアップもできるザマス。今着てるのはそちらの金髪ボーイがお金足りなさそうな顔をしていたから最安値のものになってるザマス」 「おい! ババア! 勝手なこと言うな!」 「いや、大丈夫ですありがとうございます」 「また来るザマス~!」 凄い、適当に選んだ店だったけど当たりを引いた。 また来よっと。 「なっ、なぁ、お前さん·····」 あっ、満足しててこいつのこと忘れてた。 「あっ、服買ってくれてありがとうございました、えーっと·····」 「アッシュだ、俺はアッシュ・ヴァンホーテン」 「ありがとうございます、ヴァンホーテンさん。それではこれで、さようなら」 ニコッと笑って直ぐに背を向ける。 なんか色々思うところはあるがとりあえず早くアルミナ様の別荘に行こう! なんかこいつに関わるとろくな事がないわ! 「ちょっ、待てよ!」 「ぐぇっ!?」 なっ、なんで私の腕を掴んだこいつ!? 「お前さん、勇者だろ!?」 「いっ、いやいやいや! 違います! 私はここに移住しに·····」 「だったら、その服なんなんだよ! 明らかに冒険者の服じゃねーか!」 ひいっ! 肩を掴むな! 目を輝かせんな! 「お前さん名前は!?」 「ひぎっ! さっ、サオリです」 「よーし! サオリ! この街を案内してやる!」 「だから! 私勇者じゃないって! ちょっ!? 」 私の言ってることを信じず、彼は私の手を引っ張り街へと繰り出した。
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