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誠司が真理恵との不倫を知ってしまった事は、肇にとって誤算であった。
しかし、当初の計画はまだ崩れてはいない。
「香川さん。真理恵さんとの事を知ってしまった事は仕方ありませんが、それは僕のここでやろうと思う事には変更ありません」
「何の事です?田原さんがここに落ちるんですよ?」
「僕はここから落ちますよ。もちろん」
肇はそう言って、誠司の体を両手で掴み抱きしめた。
「そしてあなたも一緒にね」
「何をするんだ!」
誠司は抵抗しようとしたが、不意に抱きつかれて身動きできなかった。
「僕はね、最初からあんたと一緒にここに落ちる為に誘ったんだよ!」
肇はそう叫んで崖へ向かって倒れて行った。
誠司の叫び声が、山の間に消えて行った。
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