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それぞれの約束
智恵子は家に戻ると、肇の言う通り机の引き出しを開けた。
そこには手紙やら保険証書やら書類がきちんと整理されて入っていた。
通帳の貯金は全額下ろしてあり、現金が封筒に入れてあった。
「肇さん、本当に真面目で几帳面ね」
手紙には
『智恵子。君と出会えて本当によかった。こんな真面目だけの男と結婚してくれる人が現れるとは思っていなかったし、愛してくれるとは思わなかったから。僕は幸せだった。だが、今回僕は君を裏切った。だから、結婚する時[お金には苦労させない]って約束だけは守らせてもらうよ。これが僕の愛の証だ。さよなら智恵子」
智恵子が手紙を読み終えた頃、警察から電話が入った。
智恵子は、夫が足を滑らせて山から落ち死亡したと聞かされた。
「肇さん。本当に約束を守ってくれたのね。真面目だけのあなた。幸せと思って死ねたなら良かったわ」
智恵子はガスコンロで肇の手紙を燃やした。
そこにまたスマホの呼び出し音が聞こえた。
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