3人が本棚に入れています
本棚に追加
あれだけ真面目な肇が、まさか不倫に走るとは誰も思うわけもなく、二人でいる所を見た従業員ですら、単なる指導の為とか、逆にヘマをした真理恵を叱咤しているんだろう位にしか思わなかった。
また肇の妻の智恵子も、たまに遅く帰ってきても安月給の為の残業代を稼いでくれていると思っていた。
お金には苦労させないからと言った肇は、絶対約束は破らないと信じていたからだった。
肇は、節約の為に弁当を持たされていた。いつも、スーパーの主任用個室でそれを食べていたが、いつしか昼休みは真理恵とそこで過ごすようになる。
元来真面目な肇は、真理恵との関係に智恵子への罪悪感を感じつつ、DVで痛めつけられている真理恵を慰める事で安らぎを感じて関係をやめられなくなっていた。
「真理恵さん、ご主人と離婚する選択肢はないんですか?」
「夫も結婚前は『誠実の誠司』と言われるほどいい人でした。私も本当に愛される事に喜びを感じていました」
「いつから変わってしまったのでしょうか?」
「結婚して1か月になる頃、私が女友達と飲んで帰って帰りが遅くなった時です。『こんな遅くまで女が出かけて、心配したじゃないか!』と初めて殴られました」
「そんな事で?」
「それからことある事に、気に入らないことがあると手が出るようになり」
真理恵は目に涙を浮かべ
「プロポーズの時「僕は君を愛し続ける。一生離さないよ」と言われました。きっと離婚はしてくれないと思います」
最初のコメントを投稿しよう!