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肇の計画
真理恵の夫の誠司は、趣味が山登りと聞いて登山用品店で買い物する日をあらかじめ教えてもらい肇は店に向かった。
誠司が商品を見ていると、肇も近づいた。
同じ品物に手を伸ばす二人。
「あ、すみません」
肇は手を引っ込めた。
「あ、いえいえ」
誠司もまた手を戻す。
すかさず肇は
「あの、僕、登山初心者なんですが、ベテランさんでしょうか?」
話しかけた。
「ベテランって言うか、まぁ、学生時代から好きで登ってますがね」
誠司も答える。
「おー。上級者ではないですか!」
そう言われると悪い気はしない誠司だった。
「初心者なんで、色々教えてくださいますか?どんな物から揃えればいいですかね?」肇は誠司が気を良くするようにおだてつつ話し続けた。
そして2週間後に又、その店に行くと言う真理恵の情報を得て、足を運ぶ肇。
「あっ。またお会いしましたね」
あくまでも、偶然の様に振る舞う。
「ご縁がありますね」
誠司もにこやかに対応してきた。
「ご縁ですね。僕今度ギリコノ山に
初めて行こうと思ってまして……」
ご縁という言葉を引き出したのは、成功だと肇は思った。
「あー僕も何度か行きましたよ。良いところです」誠司は親しげに答えてきた。
「お名前お聞きしても良いですか?」
「あ、僕ですか?香月と申します」
「僕は田原と申します。あの香月さんがもし、ご都合良ければこれも何かの縁。色々教えて頂きたいし、ご一緒にいかがでしょうか?」
香月は同じ趣味の人間という事で気を許し、約束をした。
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