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朝、駅のホームで電車を待つ俺の肩を、誰かがぽんぽんと叩く。振り返ると渚がいて、手を振ってくれる。
「おはよう!秋穂!」
「おお。おはよう、今日早いんだな。珍しい」
渚は結構ギリギリの時間に登校している。俺は早めだから、こうして朝から会えるのは嬉しいことだ。
「珍しいって……。わたし、百人一首の犯人気になるから、朝早くに目覚めちゃったの」
「そっか、そうだよな」
昨日、朝陽に言われた言葉が頭をよぎる。『ライバル出現』と言われたことだ。
「……渚は、犯人分かったらどうする?」
「え?理由を聞こうかなって思ってるけど」
今のは、はっきり言わなかった俺が悪い。俺は髪をぐしゃぐしゃとかき乱して、今度ははっきりと聞く。
「そうじゃなくて……。もし、犯人分かって告白されたらどうする?つ、付き合うのか?」
少し噛んでしまった。その恥ずかしさと、渚がどう答えるのか怖くなり俺は俯く。
「付き合わないよ」
即答の返事に、俺は顔をばっと上げる。
「でもさ、もしそいつがめっちゃいい奴だったら?イケメンだったら?それでも付き合わないのか?」
「付き合わないってば。どうしたの?なんか変だよ?」
渚が顔を覗き込んでくる。思っていたより近くて、俺は顔を逸らしてしまう。
「別になんでもない。……悪い、変なこと聞いて」
「謝って欲しいわけじゃないのに」
渚が頬を膨らませて言ったところで、電車がホームに到着した。
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