ピアノコンクールの行方は……

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 コンクールが始まり、ピアノだけなのにそれぞれ一つ一つ世界観を作り出していた。  そして気づけば終盤に入っていて、霧島の番に。  舞台上に現れた霧島は青色のドレスを着ており、中央に立つとお辞儀をした。顔を上げるとチラッとこちらを見た。俺の隣にいる花邑先輩を見たのだろう。  そして椅子に座り鍵盤に手を乗せた。曲名は英雄ポロネーズ。曲の変更はしなかったようだ。  始まると一気に霧島の演奏に引き込まれ、力強さや、真剣な表情の合間に楽しそうな様子も窺えた。  演奏が終わると立ち上がり、満面の笑みで頭を下げると、舞台袖へ帰っていった。  そして最後に出た山野先輩の演奏にも引き込まれ、あっという間にコンクールは終わった。  ざわざわした空気になると、渚に話しかけられる。 「キリちゃんかっこよかったね」  かっこいい、か。確かにあのときの霧島にピッタリの表現だ。  そして結果発表。霧島は惜しくも準優勝で優勝は山野先輩。すると二人は舞台上でハグをした。その光景に自然と周りから拍手が起こった。  花邑先輩は特別に楽屋に行けるようで足早に離れて行き、残された俺達はその場で解散することになった。  建物を出ると、先に外に出ていた渚と目が合う。 「凄いよね、イルミネーション。綺麗」 「……そうだな」  視線を下げると、俺を見上げる渚とまた目が合った。しばらく無言で見つめ合う。だが、 「こらー!二人の世界に入るな!僕も入れろ!」  俺と渚の肩を組み、朝陽の顔が俺達の間に出てきた。  いい雰囲気だったのに。でも段々と可笑しくなり久しぶりに声を出して笑った。俺につられた渚と朝陽も声を出して笑い、しばらくみんなで笑い合った。 ピアノコンクールの行方は…… 〜完〜
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