第一章 百人一首で告白されました!?

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 俺達の学校は、電車で十分程乗った先にある。 「わ、すごい人」  満員電車を見て渚が呟く。いつもと違う時間に乗っているから驚いたんだろう。  二人で乗り込みドア付近に立つ。 「……渚、こっちに来て」  少し空間を空けて、渚が押し潰されない場所を作る。 「あ、ありがと」  渚は鞄を前に抱えてドアに背を預ける。俺は自分の体を支えるためにドアに手をつく。  十分程電車に揺られ、ホームに到着。降りる人と一緒に俺達は流されるように降りる。それと同時に、渚は大きく息を吐いた。 「すごい人だったね。秋穂はいつもこの時間に乗ってるの?時間変えたら?それでも間に合うでしょ」 「いいんだよ、この時間で」  俺のこの言葉に渚は眉を寄せた。俺がこの時間にこだわる理由に気づいたのだろう。  しばらく歩くと学校が見えてきたので、俺は渚を置いて早足で先に行く。 「それじゃあ、俺は先に行くから」  そう言ったのに、歩き始めた俺の横に渚が並ぶ。 「なんでよ、一緒に行こうよ。同じクラスなんだし、また会うじゃん。ここで他人のフリなんておかしいよ」 「なぁ、渚。わざとだろ。……俺の噂、知らないわけないよな」  俺がそう言うと、渚は俯き鞄の紐をギュッと強く握った。 「知ってるなら、」 「ただの噂じゃん。それに、秋穂はそんな人じゃないって、わたし分かってるから」
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