第一章 百人一首で告白されました!?

11/27
前へ
/150ページ
次へ
「いいね。この、これぞ朝!って空気。ちょっとひんやりしてるけど」 「最近は涼しくなってきたからな」  靴箱で履き替えながら渚とそんな会話をする。それに、渚と一緒に登校していることに俺は浮かれていた。  さっきまで距離取ろうとしていたのに、今は一変して浮かれている俺自身に苦笑いしてしまう。  上履きに履き替え、廊下を数歩歩くと曲がり角があり、そこを曲がると教室が並んでいる。  俺と渚は教室の中へと入りたかったのだが、誰かがドアの前にいて入れない。  誰かと言ったが、正体はすぐ分かった。 「……花邑先輩、何しているんですか」  花邑先輩は俺の声に気づき、こちらを向く。 「長谷くんと藤倉さん、おはよう!君達の組はここで合ってるよな?」  昨日渚が戻った後、俺達が何組なのかを聞かれた。だから先輩はここに来たのだろう。 「合ってますけど、何かありましたか?」  渚が不安そうな顔をして聞く。 「いや、何もないが事件現場を見てみようと思ったんだ」  事件現場って。 「どんな風に置いてあったのか実際に見てみたくてな」  と、先輩はポケットから百人一首を取り出す。 「そうですか。……えっと、こっちです」  先輩を案内するために俺達は教室に入り、ロッカーの前に立つと、渚は急にしゃがみ込んでそのまま固まった。  渚の緊張感が漂う空気に、先輩は彼女の隣にしゃがみ込み、俺は二人の後ろから覗き込む。    渚のロッカーの隅にカードが置かれていた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加