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日が傾き始めた放課後。俺達のいる部室から聞こえてくる運動部の声出し。その声を聞きながら俺は、機嫌が悪そうな先輩の視界に入らないよう、静かに席に座る。
その先輩とは探偵部の部長、三年生の花邑蒼先輩。
今その人は教室の、ど真ん中の席に座って少し下を向き、腕を組んでいる。
そして、しばらくするとバッと顔を上げた。
「事件がない!」
すると俺の隣の席に座る、朝陽が口を開く。
「平和でいい事じゃないですか?それに、僕らの部って、あんまり知られてないんですよ。しょうがないですねぇ」
のんびりとした口調で話す朝陽に、花邑先輩はくるっと振り向きこちらを見る。
「知られていないなら、知ってもらうために努力しないといけない!そうだろ二年生コンビ!」
と、俺と朝陽を指差す。
あーあ、俺も巻き込まれた。先輩は機嫌が悪いと、話が止まらない。それが嫌だから静かに座ったのに。そんな先輩を気にせず、大きな欠伸をする朝陽に苛立つ。
そんな俺の心境など知らず、先輩は長々と話し始めた。今度は静かにゆっくり席を立つ。
「分かってるさ、あのホームズも最初から依頼がわんさか来たわけではないことを!だがこれは、……長谷くん何処に行くんだ?」
ばれたか。熱弁を振るっている間に逃げようと思ったんだが。
「いや、ええっと、そのちょっと」
「図書室だよなぁ。会いに行くんだろ?なぎ、」
朝陽が名前を全部言う前に、俺は彼の肩を鞄で思いっきり殴る。
「痛いって」
「朝陽がべらべらと喋ろうとするからだろ」
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