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俺が心の中で未来の依頼人に忠告したとき、穂村先輩が花邑先輩に文句を言う。
「そんな役割押し付けたら可哀想よ。折角依頼に来てくれたのに、その子もう来なくなっちゃうわよ」
「んー。では相手側に決めてもらうか。無理強いはしない」
「してくれる人いますかね?」
朝陽はそう言うと立ち上がり、部室の端のスペースに行き何か作業をしだした。しばらくすると、コーヒーの香りがふわっと漂ってくる。
「あ、コーヒー淹れましょうか?」
朝陽がくるっとこちらを向き、そう聞いてきた。
「……淹れてくれ」
「私も頂戴!」
「じゃあ俺も」
俺は朝陽を手伝おうと立ち上がり、コーヒーメーカーに粉を追加させる。
本来こういった持ち込みは駄目なのだが、花邑先輩が『探偵と飲み物は必須なセットだ!』と力説した結果、他の部には知られないようにという約束で、コーヒーメーカーを置かせていただくことになった。
コーヒーメーカーのスイッチを押し、朝陽につられて俺もぼーっと抽出されているところを見ていると、コンコンとドアをノックする音が。
花邑先輩がガタッと立ち上がる。
「依頼人か?……入ってくれ!」
「失礼します。花邑蒼さん、いらっしゃいますか?」
ドアをガラッと開けて入ってきたのは、俺と朝陽の幼馴染みで俺が片思い中の人の、
「な、渚!何で!」
藤倉渚が、来てしまった。
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