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今日は前回紹介した8年前の書きかけ(スター特典参照)を解説します!
今気づいたけど、わざわざスター特典にせんでも、この流れに画像貼ればよかったよね。
こういうこと年々増えてきた気がするので、老化現象かもしれません。
単純なことなのに、その時は気づかない…。
少し時間を置くって大事ですね。
少しどころか8年も経過して、すっかり他人目線で読める当該作品。分析も客観的にできていればいいのですが、どうでしょうか?
↓よろしければお付き合いを。
スター特典で公開している部分は、実は冒頭ではありません。
冒頭部分は時系列的に公開した範囲よりも未来で、ややこしくなるだけなので供養には入れなかったのでした。
で、夏の夕方、客先(かつての職場)から帰宅するところからの、アラフォー男子宅飲みシーンです。
▼4ページめあたりまで▼
妻と娘が過去形でさらっと登場。そのあとは蒸し蒸しの自宅でシャワー浴びるところまで、とにかく「暑い」の描写が続きます。
これ、縦書きだとわりと読めるのですが、横だと行数が増えるので、退屈な人には退屈かもしれません。
一応ここでは「暑さ」が妻子を思い出すフックであり、後のビールを引き立てる前振りになっています。
帰宅→庭→家の中と語り手を動かしながらテンポよく、いわゆる"能書き"の部分をこなします。
雑草伸び放題とか、暑い部屋に戻ってきた様子は、一戸建てに独り住まいの侘しさを表しています。
去年までは妻子と休暇を過ごした、からの落差。一人称でも「寂しい」とか言わせない。思ってないはずないんだけど、はっきり言いたくない(負け惜しみ?強がり?無自覚?)感じ。
今日中にやっておきたい仕事あったのにシャワー浴びてビール飲んじゃう。在宅勤務の醍醐味(?)にも触れています。
→そんなに頑張らなくてもいい状況であることを匂わせつつ、かつての同僚・ゴリ山さんからのお誘い→宅飲みへのリアリティある流れを作っています。
「仕事が完全にオフで、そこにちょうどよくお誘いが…」でも、展開への影響はないのですが、そんな解放感溢れる飲み会ではドラマにならぬ。
日常的な小さい葛藤を織り込んでいます。
ここは「僕」を読み手に紹介するパート。
一人称なので、僕はこういう人間です、とは言わない。自分では自分のことはよく見えないですし、性格だけでなく、どこにいるどんな人かもインプットしたい。
ただ、それを列挙しても面白くないので、日常風景の中に導火線を仕込んで展開へ繋げています。
▼ゴリ山さん参上▼
コンビニ惣菜と缶ビールで宅飲み開始です。
ゴリ山さんが登場したので、ゴリ山さんの紹介をしなければいけません。
もちろん「僕」との関係性も、読み手に感じ取ってほしい。物語も展開させたい。
書き手の仕事が増えたところで、「飲み会」という場は便利です。食べ物、食べ方、会話で色々な表現ができます。
デパ地下惣菜ではなくコンビニ惣菜。
シャンパンやワインではなく缶ビール。
フタを取り皿代わりにして惣菜つまむところは我ながらサイコーです。なんならここ書いたとこだけは覚えてました。
ゴリ山さんは先輩ではあるけれど気を使わない距離感。男同士でもさすがに皿くらい出すと思いますけど、この人たちはいつもこう。
この「いつもなんだろうな」って感じてもらえれば成功です。
ゴリ山さんの紹介は飲みっぷり食べっぷりで。コンビニおにぎりなら一つを三口くらいで食べ切る勢いを感じてほしい。
鮫島を「さみし(寂し)ま」と呼んじゃう、ちょっとウザいけど憎めない人。
軽いやりとりでゴリ山さんが「職場の先輩」というだけの存在ではないことがわかります。
会話が途切れるとテレビやエアコンの音がします。一戸建てに男二人、話してないと静か。
ちょこちょこ出てくるビールが、時間の流れや登場人物の心理描写に使われています。
缶の水滴を指で落とすゴリ山さん。後輩女性に会ってくれって、言い出しづらいんでしょうね。軽いながらに、彼なりの「僕」への気遣いが感じられる会話が続きます。
ゲップしたり、ニカッと笑って首ひねったり、お茶目なゴリ山さんで場がシリアスになりすぎないようにしているのは意図的なんでしょうか。もう思い出せませんがいい味出てます。すき、ゴリ山さん。
一人称だと語り手は平凡なキャラになりがちなので、他の登場人物との関係で魅力を引き出す必要があります。
ゴリ山さんに対する「僕」はゴリ山さんのように明るくおおらかで茶目っ気のあるタイプではなさそうですが、冗談が通じないわけでもない。
性質が違うから馬が合ってる、が軽妙なやりとりから伺えます。
一人称で、地の文は、読み手に直接語りかけているとすれば、会話の応酬は語り手の横顔を見せるところだと思います。
最後、テーブルの上の開けてないビールに視点を移す。これは今でもよく使いますが、シーンの区切りをよくするヒキのカメラワークです。
空き缶ではなく、飲みかけでもなく、まだ開けてないビール。大粒の水滴(ぜったいもう中身ぬるい)。佇んでいる。
場の空気を引き受けて余韻を作っています。
▷飲みかけだったら…
缶ビールなので外からは中身が残ってるか空なのか見えないので、これは不採用
▷空き缶だったら…
"テーブルには空になったビールの缶が転がっていた。"
飲み会完全燃焼!って感じ。女性を紹介されることに「僕」はそこまで乗り気でなかったし、ゴリ山さんが(茶化してはいたけど)ちょっといつもと違うことを言ったあとなので、これでは締まりません。
「転がって」にしたのは、飲みかけと同じ理由で、缶は中身が見えないからですが、こういうところもドラマが始まろうとしているシーンに合いません。
「僕」は、ゴリ山さんの頼みとあらば断れまい!みたいな人情派じゃなさそうなんですけど、ゴリ山さんがこういうタイプの人に「しょうがないなぁ」って思わせるキャラ。
作者的には女性に会いにいってもらわないと話が進まないので困るのですが、ここではまだなんとも言えない状況。次の章の始まりに一文でもいいから「しょうがないから会うことにした」の理由を挿れておくと自然かも。
…などと思いました!(そうは読めなかったけど…という部分あったらすみません💦)
しかし、そもそもですが、39歳バツイチ男の話…地味過ぎん?
大人の恋愛を書こうとしてたんだと思うんですけど、男性サイドの一人称…逆張りがすぎる。
この"題材の取り方"は私の一番の課題ですね。
かといって、ヒューマンドラマとしての展開は思いつかないし、このお話はここまででお蔵入り。
解説含め読んでくださった方、ありがとうございました!
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