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四年後。
あれから四年が経った。
あのあと人の世を襲ったウイルスのせいで、約束していた夏祭りはやむなく中止を宣言した。
そして、毎日のように増え続ける感染者のニュースばかりが流れていく。
大学受験を終えて、大学生になり、道を違えた彼と会うこともできなった。
友人の祖父が亡くなった知らせを受けたのに、その葬式に行く事もできず、ただ毎日を家に籠って過ごしていた。
晴れて大学生になったはずなのに、私は毎日ただ家の中でぼんやりと画面を見ている日が増えた。
そんな日々に変化が訪れたのは、ほんの少し前のこと。
「今年、お祭りやるんですって」
母から伝え聞いたその話に、私は慌てて地元に帰った。
真っ先に向かったのは、透哉の家だ。
――やっと、やっと約束が果たせるんだ……!
見慣れたロビーを通り抜け、四階の、白い扉に立って、人が出てくるのを待つ。
しかし扉から顔を出した彼の母は、言った。
「透哉は、まだ病院にいるの」
知らなかった。
彼がまだ、手術を受けられていなかったこと。その原因が、あのウイルスのせいだということ。
そして、その話は、母も知っていたということを。
「――嘘だ」
「……ごめんね、花火ちゃん。透哉から、言われていたのよ……」
花火には言わないで、と。そして――。
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