四年後。

1/1
前へ
/3ページ
次へ

四年後。

 あれから四年が経った。  あのあと人の世を襲ったウイルスのせいで、約束していた夏祭りはやむなく中止を宣言した。  そして、毎日のように増え続ける感染者のニュースばかりが流れていく。  大学受験を終えて、大学生になり、道を違えた彼と会うこともできなった。  友人の祖父が亡くなった知らせを受けたのに、その葬式に行く事もできず、ただ毎日を家に籠って過ごしていた。  晴れて大学生になったはずなのに、私は毎日ただ家の中でぼんやりと画面を見ている日が増えた。  そんな日々に変化が訪れたのは、ほんの少し前のこと。 「今年、お祭りやるんですって」  母から伝え聞いたその話に、私は慌てて地元に帰った。  真っ先に向かったのは、透哉の家だ。 ――やっと、やっと約束が果たせるんだ……!  見慣れたロビーを通り抜け、四階の、白い扉に立って、人が出てくるのを待つ。  しかし扉から顔を出した彼の母は、言った。 「透哉は、まだ病院にいるの」  知らなかった。  彼がまだ、手術を受けられていなかったこと。その原因が、あのウイルスのせいだということ。  そして、その話は、母も知っていたということを。 「――嘘だ」 「……ごめんね、花火ちゃん。透哉から、言われていたのよ……」  花火には言わないで、と。そして――。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加