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ー 凛太 side ー
風呂上がりの鈴音は、いつも以上に無防備だ。
甘い香りに火照った素肌。
色白の肌を、内側の熱が淡く染める。
少し湿った長い黒髪が、心の中をざわつかせるのだ。
「鈴音は、自由になりたいとか思うのか?」
だから、あんなことを口走ってしまった。
でも、返ってきた返答は予想の斜め上を越えていた。
いかにも、文学好きな鈴音らしくて納得がいく。
「俺の自由は、誰にもなんにも囚われずに好きと伝えられること」
口に出してみたけれど、虚しさが増しただけだった。
これを実行すれば俺は自由だけれど、同時に大切な人を悲しませることになる。
がんじがらめの現状に呟いてみても、所詮自分は何も出来ない子供だ。
早く、一刻も早く大人になりたい。
そうすれば、何かが変わるのかもしれない。
でも、その前にこの気持ちが、只の勘違いだったことにはならないだろうか。
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