日常

7/9
前へ
/89ページ
次へ
ー 凛太 side ー  風呂上がりの鈴音は、いつも以上に無防備だ。  甘い香りに火照った素肌。  色白の肌を、内側の熱が淡く染める。  少し湿った長い黒髪が、心の中をざわつかせるのだ。 「鈴音は、自由になりたいとか思うのか?」  だから、あんなことを口走ってしまった。  でも、返ってきた返答は予想の斜め上を越えていた。  いかにも、文学好きな鈴音らしくて納得がいく。 「俺の自由は、誰にもなんにも囚われずに好きと伝えられること」  口に出してみたけれど、虚しさが増しただけだった。  これを実行すれば俺は自由だけれど、同時に大切な人を悲しませることになる。  がんじがらめの現状に呟いてみても、所詮自分は何も出来ない子供だ。  早く、一刻も早く大人になりたい。  そうすれば、何かが変わるのかもしれない。  でも、その前にこの気持ちが、只の勘違いだったことにはならないだろうか。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加