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私と凛太は、いよいよ高校生最後の夏休みに入った。
突然ですが、世の中の夏のイメージはなんでしょう。
おそらくそれは、『一夏の思い出』ではないでしょうか。
まさに自分は今、涼しい室内でそれを試されている。
「ほ、本当にするの?」
「冬は受験だから、今しか出来ないんだ」
「む、無理だよ! 私やった事ないもん」
「大丈夫だから。な?」
「ぴ、ピアスなんて開けたことないよ。なんでこんな大役私なのよ!? 友達でいいじゃん」
「あいつらには、会った時に驚かせたいだろ? だから、鈴音が都合良い」
「うぅ…! い、痛かったらすぐに病院に行くんだよ!」
震える手で凛太の耳たぶを触る。
冷たくて想像以上に柔らかい。
こんな至近距離、初めてかもしれない。
「い、いくよ」
「お願いします」
ー バチッ ー
予想の倍ほどの音が響いたあと、凛太の左耳に金色の小さな物体が輝いていた。
「お、いいね! 案外痛くなかったし、サンキュー」
「こっちは死ぬかと思ったよ…」
「大袈裟だって。まぁ、お礼にアイス奢るから」
私は夏の日差しの中を、未だ消えない胸の爆音をお供に凛太と歩いた。
髪の隙間から見えるキラキラが、何故かやたらと眩しかったのは永遠に秘密だ。
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