日常

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  ー 三年前の春 ー  桜の蕾が少しずつ開花して、人々に喜びを届ける頃。  私たちの家族は、新しい形となった。 「鈴、今日から一緒に暮らす凛太くんよ」 「初めまして、鈴音と言います。同い年だよね? よろしくね」 「…ども」 「凛太、もっと愛想良くできないのか」 「なんでよく分かんない人にさ、そんなことしなきゃいけないの」  第一印象は、生意気で怖そうな奴。  ただそれだけだった。  そして、二人きりになれば 「親の前では仲良くしてやってもいいけど、姉がいるって言ってないから、外では他人のふりをして」  こんな風に、自己中っぷりを発揮していた。  後々聞いたら人見知りだったらしいけど、そんなことなど知らなかった当初の私は、腹が立っていた。  でも、それと同じくらい悲しかった気がする。  お互い高校にあがりたてということもあって、複雑な感情だったのだろう。  関係性にすごく悩んでいたけれど、凛太が好きな車のメーカーを必死に覚えて、話しかけていた気がする。 「懐かしいな、高一の凛太」  栗色でさらさらとした髪に、白い肌。  女装の似合いそうなくりくりの瞳。  性格は難があったけれど、写真に収めたくなるほど可愛かった。
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