53人が本棚に入れています
本棚に追加
ー 三年前の春 ー
桜の蕾が少しずつ開花して、人々に喜びを届ける頃。
私たちの家族は、新しい形となった。
「鈴、今日から一緒に暮らす凛太くんよ」
「初めまして、鈴音と言います。同い年だよね? よろしくね」
「…ども」
「凛太、もっと愛想良くできないのか」
「なんでよく分かんない人にさ、そんなことしなきゃいけないの」
第一印象は、生意気で怖そうな奴。
ただそれだけだった。
そして、二人きりになれば
「親の前では仲良くしてやってもいいけど、姉がいるって言ってないから、外では他人のふりをして」
こんな風に、自己中っぷりを発揮していた。
後々聞いたら人見知りだったらしいけど、そんなことなど知らなかった当初の私は、腹が立っていた。
でも、それと同じくらい悲しかった気がする。
お互い高校にあがりたてということもあって、複雑な感情だったのだろう。
関係性にすごく悩んでいたけれど、凛太が好きな車のメーカーを必死に覚えて、話しかけていた気がする。
「懐かしいな、高一の凛太」
栗色でさらさらとした髪に、白い肌。
女装の似合いそうなくりくりの瞳。
性格は難があったけれど、写真に収めたくなるほど可愛かった。
最初のコメントを投稿しよう!