日常

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ー 凛太 side ー  鈴音と別れて一人になると、ふと出会った頃を思い出す。  最初の印象は、顔は綺麗だけど良い子ぶってる八方美人。  ほぼ毎日、喧嘩していたな。  酷い時には、一週間くらい口を聞かなかった。  今思うと格好悪い話しだけど、女子と一つ屋根の下ということに、この上なく抵抗があって意地を張っていた。  ダサいけど、本当にダサすぎて笑い話にもできないけど。  ここまで仲良くなれたのは、間違いなく鈴音が歩み寄ってくれたから。  俺の誕生日の日、顔を赤く染めながら一生懸命伝えてくれたあの言葉は、今も胸を締め付ける。 「凛太は私を嫌いかもしれないけど、私はあんたが来てくれて、お母さんと同じくらい本当に嬉しいよ」  あんな鈴音を見せられたら、嫌でも自分の幼さを痛感せざるを得ない。  でも未だ、あの日のお礼を俺は言えていない。   「鈴音は、大人すぎんだよ…」  早く、俺も追い付きたい。
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