プロローグ

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プロローグ

 幼い頃の記憶の中に、うっすらと父親の顔がぼやけて残る。  私が父親を覚える前に、あの人は家を出て行った。  それから私は、母とずっと二人で暮らしていた。 ー 遡ること四年前 ー  母は幼い私を女手一つで育てながら、仕事にも手を抜かず保育士の正規職員として働いてくれていた。  寂しい日もあったけれど、一人で本を読む時間はそれなりに充実していた。  だから、こうして幸せに暮らしていられるのは、間違いなく母のお陰。    どうか、母には幸せになってもらいたいと思った。 「鈴、今いい?」 「うん。どうしたの?」  久しぶりの外食の時に、母が改まって告げたこと。 「私ね、結婚したい人がいるの」 「うん、いいよ。お母さん、幸せになって」  あの日、母の涙ぐんだ姿を久しぶりに見た。  そして、心からの笑顔も。
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