⓪ 抱きしめて…そして

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⓪ 抱きしめて…そして

この話はエピソード0として聞いてほしい。 オレに初めての感覚を覚えさせた出来事。 石山隼人25歳。 同じ社内の事務職。 日常的な関わりはあまりない。 月に数回の書類やデータのやりとり、 提出物関連をお願いするだけの関係。 背がすらっと高く、 なで肩、 筋肉などほぼないかなりの痩せ型。 髪型もこだわりなく、 表情に乏しく、 おしゃべりなタイプでもなく、 黙々と仕事をする彼。 でも実はそんな感じの体つきや風貌が好きだ。 長身でゴツゴツ骨張った背中、 全く無駄のない腰回り、 引き締まった尻。 そして大きい手に長い指。 純粋に抱きつきたい、 一方的に甘えたいそんな感情になる。 今までの5人は、 欲望の放出が最終地点だったが、 彼は違う。 されたいともしたいとも思わない。 願わくば抱きしめられたいくらい。 キスも要らない。 そういう思いにさせる人。 もちろん、 彼が男に興味なんてないことくらい容易にわかる。 でも一度でいいから体験したかった。 コミュニケーションを増やそうかと思ったが、 あまり人と積極的交わるタイプでもない。 かといって上司部下の関係でもない。 なのでいつも使う古典的な方法を試みた。 オレの部署と彼の部署でも合同の飲み会を企画した。 10人程度に抑えて、 いつもお世話になってる事務方を労う会にした。 そして、 その機会を作った。 帰り際、 店を出る時にオレは飲み過ぎたフリをして彼にもたれかかった。 「三井さん、大丈夫ですか?」 淡々と言う。 「ちょっと目眩がする…」 「帰れますか?」 「多分…」 「支えてますから」 「ありがとう」 彼にもたれかかりながら、 腕を組まれふらふら歩き出した。 「三井さんは、俺が送りますね」 彼はそう他のメンバーに言うと、 オレの歩幅に合わせゆっくり歩き出す。 少し歩くと公園がある。 「ちょっと休むわ。いいか?」 「はい」 ベンチに座り、 オレは彼の肩にもたれかかる。 彼は何も言わない。 そういう奴だ。 悪気とかじゃない。 「ごめんな、世話かけて」 「気にしないてください」 感情があるのかないのかよくわからないが、 そんなところも惹かれてしまう。 オレは思い切って言った。 「少し横になっていいか?」 「どうぞ」 膝枕の状態になった。 ここで頭でも撫でてくれたら最高なんだけど、 そんな事はあるはずもない。 だから、 オレは顔を腹側に向けてちょうど下腹部に顔がくるような体勢で横になった。 腹も全く無駄肉がない。 貧相と言ってしまえばそれまでだが、 それもまた魅力だ。 あまり長い時間のこの体勢は迷惑だと思い、 5分くらいで起き上がった。 「少し楽になった」 「よかったです。家まで送りますね」 またも淡々と話す。 「頼む。ありがとな」 会話は一切なく、 程なくオレのマンションに着いた。 「中まで頼むわ」 「はい」 部屋に入ると、 オレはそのまま倒れるふりをして彼に後ろから抱きついた。 「悪い…家着いたら気が抜けちゃって…」 「大丈夫ですよ」 後ろから腰に手を回して、 背中に顔を付けた体勢。 飾り気のない匂いがする。 骨張った背中なのに温かい。 このままずっとこうしていたい。 でも迷惑だ。 「ベッドに行くわ」 そのままの体勢で、 ベッドに行き、 ベッドの端に2人並んで座った。 「ふぅ〜ありがとな」 「本当に大丈夫ですか?」 「石山くんが支えてくれなかったら帰れなかったよ」 「そうですね…」 オレは再び彼にもたれかかった。 「まだ少しふらふらするな」 「落ち着くまで居ますから」 「うん…」 ここからが勝負だ。 オレはもたれた体を倒して再び膝枕の状態になりそして腰に手を回した。 「この体勢でもいい?」 「えぇ」 オレは眠ったふりをした。 彼の股間がオレの鼻から口のあたりにある位置で。 彼がどんな風に対応するか気になった。 予想通り何もしない。 「なぁ、石山くんさ、しばらくこのままじゃ嫌?」 「えっ?まぁ別に…」 「ありがとう」 腰に回した手に力を入れた。 「ごめん…落ち着く…」 「よかったです」 「気分悪くない?」 「大丈夫です」 「そっか」 あまり長い時間もダメだと思い、 体を起こした。 「だいぶ楽になった、ありがとう」 「大丈夫ですか?良くなるまで居ますよ」 「帰らなくていいの?」 「1人ですし、明日は休みだから大丈夫です」 終電間近で、 恐らく間に合わない。 「本当にごめん」 「気にしないでいいです」 お世辞や気の使った事は言えない人だから、 オレはますます抱きしめたくなる。 抱きしめられたくもなる。 彼はいつも寡黙で、 決して社交的ではない。 10個も下なのに年齢的な若さからはだいぶ落ち着き放っている。 それがオレには魅力的に映る。 オレはベッドから降り、 床に座る。 彼はベッドに座ったままだから、 両足が目の前にある状態。 正直抑えられなくなった。 両足の間に体を入れ、 正面から腰に手を回して抱きついた。 「なぁ、こうされるの嫌か?」 「う〜ん、何とも…」 「今は…こうさせて」 「はい…」 「石山、ちゃんと食べてるの?」 「食べてますよ」 「全然無駄肉ないんだな」 腰回りをさすりながら言った。 「太りにくいんです」 「いいじゃん」 「僕はあんまり好きじゃないです」 「羨ましいよ…というかオレは…好き」 「好きって…」 「こういう体…好きなんだよ」 「はぁ…」 「直に触れたいな」 「…恥ずかしいです」 「お願い」 オレは腰に回していた手を離し、 彼のワイシャツのボタンを外した。 抵抗はしない。 筋肉もない、 無駄肉もない、 見栄えはしない体。 そんな胸に抱きついた。 人工的な匂いもしない、 自然な男の匂いにオレはクラクラした。 「何か安心するな」 「そうですか?」 「俺、こうしたかった」 「まさか…ですね」 「なぁ、手…見せてくれる?」 「はい」 太めの長い指、 全体的に大きい。 手をさすりながら、 「手…大きいな」 「そうですね」 「もっと近くでいい?」 彼の右手にそっと鼻を付けた。 こんな大きな手で、 抱きしめられたい、 手を繋がれて眠りたい。 そんな事を初めて感じた。 でも言えない。 オレは再び腰に手を回して、 無言の時を過ごした。 そして、 彼のベルトを外そうとした。 拒否されてもいい。 一方的でいい。 「三井さん…そこは…」 「見るだけ」 ちょっと甘え口調で言った。 「見るだけですよ」 ベルトを外し、 スラックスを膝下まで下ろした。 珍しいトランクス派だ。 トランスクス越しに顔を埋める。 無反応な柔らかいモノが当たる。 オレは自然とそれをつまんだり、 指で撫でてみた。 「見るだけって…」 「だって、気になる」 「勃たないですよ」 「わかってる」 オレは続けた。 勃たないことは確信していた。 最後までなんて毛頭考えていない。 この体を堪能したいだけ。 前開きの窓から指を入れ、 直接触れた。 無反応ながら重量感あるモノを握って、 「舐めていい?」 「それは…」 トランスクスを下げ、 ゆっくり口に含んだ。 全く反応しないのに、 オレは舌で転がしたり、 吸い上げたりした。 それだけで満たされる自分がいる。 何の抵抗もしない彼だったが、 いい加減言った。 「三井さん…すみません」 「ごめん」 「いや、応えられなくて」 「そんな事ないよ」 「三井さんは嫌いじゃないけど、そういう事は…やっぱり」 「わかってるよ」 オレはトランクスを上げ、 スラックスを履かせてベルトを締めた。 「今日はありがとう」 「いえ」 「石山に…バレちゃったな」 「僕は気にしません」 「嬉しいな」 相変わらず表情も薄く、 淡々としている。 しかし、 「三井さん…しましょうか?手なら…」 「はい?」 「僕も男なんで…わかりますよ」 「…これで十分」 「それ以上は出来ないけど、します」 そう言うと、 彼はオレを後ろ向きにして、 ベッドに座らせ、 後ろから柔らかく抱きしめた。 オレはそれだけで鼓動が大きくなる。 「いいの…?」 彼は無言でオレを抱きしめ続ける。 そして、 オレのベルトを外した。 スラックスを脱がせ、 ボクブリも下げた。 既にガチガチになったモノを握り、 扱き始める。 声は出せなかった。 彼の気持ちが冷めてしまうようで。 最後だけ言った。 「イクッ!」 彼はオレの分身を左手で受け止めてくれた。 ちゃんと敏感な先端もティッシュで優しく拭いてくれた。 「三井さん、帰ります。もう大丈夫ですね?」 申し訳ない気持ちがいっぱいで、 こんな事しかできなかった。 「うん、これタクシー代」 「何か寂しいですね、そういうの」 「えっ?」 「泊まっていけとか言わないんですか?」 「…」 「自分だけ…気持ち良くなって」 「石山は…無理だろ?」 「自分でシコるくらい出来ますよ」 「そうか…悪かったな」 「見たいですか?」 「うん…」 彼はスマホを取り出し、 自ら下半身丸出しにして、 ネタを探し出した。 オレが口で何をしても反応しなかったモノが、 ゆっくりビクビクと反応する。 仁王立ちで、 スマホ片手に太棹を扱き始める。 呆気に取られていると、 「三井さん…近くで見て」 「おぅ」 「もっと近くで」 「…」 「イキますよ!目の前で見て」 「どこに出すの?」 このままだと顔面にかかってしまう。 「ぶっかけていいですか?」 そう言うと、 先端から白い液体がオレに目がけて発射された。 彼は、 すぐにティッシュでオレの顔を綺麗に拭き、 自分のモノを拭きながら言った。 「僕もバレちゃいましたね」 「こういうのが好きなのか」 「セックスより好きかも。相手にオナニーさせながら普段はもっと言葉責めとかしますよ」 「見かけによらないな」 「入れたり、しゃぶられたりより自分でするのが好きなんです」 「で、ぶっかける?」 「顔とか、胸とか、アソコとか」 「マジか…」 「でも男にしたのは、初めてでした」 「すまんな」 「結構興奮しました…三井さんなら…」 「持ち上げるなよ」 「またしましょう」 「???」 「もしかしたら、勃つ時がくるかも!笑」 「期待しない…」 抱きしめるだけでよかったのに。 またこんな関係になってしまった。 たまに会うと、 同じ事をしてくれる。 まだ彼は勃つ事はないが。 今、 話せるのはここまで。 その後どうなったのか、 新たな体験談が増えるのか、 はたまた恋や愛だのといった展開が生まれるのか、 またの機会をお楽しみに。 完
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