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途中まではよくある話かと思いきや、ラストはなんとも後味が悪い。
本を閉じると、俺はどんな気持ちになればいいのかわからなくなった。
『サンクチュアリ』といい『鏡像』といい、相原が書く小説は、なんというか、読み手の常識や価値観を試すようなエンディングになっている気がする。
…あいつはなにを考えて、こんな話を書いているんだ?
なんとなく、相原のほかの小説はいったいどんな話なんだろう、と気になった。
マップをひらくとちょうど、近くに大きな本屋があることがわかる。俺はサイフにスマホとカードキーだけを手にもって部屋を出る。
探していた本屋に入ると、新刊が出たばかりだからか、入り口のすぐ近くには相原の特設コーナーができていた。
平積みからてきとうに二冊取ると、そのままレジにむかう。店員は俺の顔をチラチラと見ながら本を受け取り、それぞれバーコードを通していく。
そこで、帽子とマスクを忘れたことに気づいた。
堂々とすれば意外とバレない、とだれかに聞いた覚えがあった俺は、さりげなく背すじをのばしてみる。とたんにビキビキと背中が痛みだし、自分が負傷していたことを思い出した。
「あのう。新刊は買われなくて大丈夫ですか。今ちょうどサイン会をやっていて、お買い上げの方に参加券をお配りしているんです」
「サイン会?相原の?」
なに人気作家みたいなことをしてるんだあいつ。いや、人気作家なのか。相原のくせに。
「いえ大丈夫です。これだけで」
サインは心の底からいらなかったが、どれくらい人が入っているのかだけが気になり、会場の前を通って帰ることにした。
通路を歩いていると、つきあたりにある男性用トイレから人がひとり出てきた。まさかの相原本人だった。気づくのが遅れた俺は咄嗟に足をとめるも、不自然に固まった状態で目が合ってしまう。
相原は目を見開き、俺の顔と手元を交互に見た。
「入江…お前もしかしてサイン会に来たのか」
「ちげえよ。鳥肌が立つことを言うな」
俺が持っていた本のタイトルを確認すると、相原は怪訝そうな顔をする。
「ああそれ買ったんだ。この前あげた新刊の方は読み終わったのか」
「まあね」
「お前、読むスピード結構はやいな。どうだった?せっかくだし、感想聞かせろよ」
「どうって言われても」
「なんでもいいよ。思ったことで」
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