舞台上の月と太陽

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舞台上の月と太陽

 炎が目の前まで迫ってきている。パチパチと火の粉のはぜる音が聞こえる。少しでも気を抜くと、あっという間に飲み込まれてしまいそうだ。彼女の瞳の中で燃えさかる、怒りの炎に。 「……なにその目? 言いたいことがあるなら言えば? 昔から黙って人を動かそうとするよね」 「好きでこうしてるわけじゃない。言いたいけど、うまく言えない人だっている」  炎の威力を弱めることなく、彼女はまっすぐ私を見すえた。そうだ。それでいい。あんたが本気であればあるだけ、私も本気になれる。 「あっそ。私、あんたのそういうとこ大っ嫌い。ぜんぶ他人事みたいな顔して、何考えてんのか分かんなくて! どうせ一人でもこれっぽっちも寂しくないんでしょ?」 「なんでいつも勝手に決めつけるの? 私の気持ちなんて、何も知らないくせに!」  わなわなと唇を震わせながら、彼女が手を振りかぶった。その調子だ。もっと、もっとぶつかってこい! 私だって全身全霊でぶつかる。たとえこの瞬間に命が尽きても、後悔しないように。 「やれるもんならやってみなさいよ、この弱虫!」    私の想いに応じるように、炎がゆらりと大きく揺れる。彼女の手が視界から消えたと同時に、バチンッ! と重たい音が劇場内にこだました。
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