確かめ屋 三田浩二 顛末記 『十三番館 開かずの間』

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『十三番館 開かずの間』②  俺はいつも、夜の8時からバイトの勤務にはいるが、今日は大学の講義が休講になったので、昼のカフェタイムからバイトに入った。  午後3時のカフェ『琥珀亭』は、お昼のひと時をくつろぐ客で、ほぼ満員だった。  本日、平成某年、6月某日、天気 雨。  午後のひと時を楽しんだ有閑マダム風の3人づれが店を出るのと入れかわりに、若い男が、服に着いた雨の(しずく)を払いながら入って来た。  6月の雨がウルフカットの髪から、ポタポタと垂れている。  俺も若いが彼も若い。明らかに20代だろう。若い男は、開いた席を見つけるとバックパックを下しつつ、ふんぞり返って座った。  俺は、すぐに水をテーブルに置いた。若い男は、あからさまに俺の顔を見て言った。 「お、君ぃ三田君じゃね? 『確かめ屋』の三田浩二君だろ」  ちょっとばかし、高飛車(たかびしゃ)な言い方だ。 「は、はい。三田ですが。何故『確かめ屋』のことをご存じなんですか?」  そう、『確かめ屋』とは言うものの別に看板を出しているわけではない。客は主に大枝(おおえだ)社長のつてでやって来る。  若い男は言った。 「親父の取引先の大枝社長から君の事を聞いてね。俺っちは中村(なかむら)楽太(らくた)ってんだ。実は確かめてもらいてえことがあるんだわ」  なんかべらんめえ口調(くちょう)の人だな。 「はあ、ご依頼を受けるかどうかは、お話を聞かせていただいてからにしておりますので。まずどのような事か、お教え願えますか?」 「おう、手っ取り早く言うとだな。あるアパートに出た幽霊の正体を確かめてもらいてえんだ」
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