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そういえばそんな顔して笑ってた
向けられる銃口に、怒りだとか疑問だとかは浮かばなかった。
ただ、悲しかった。
それは、想いが裏切られたからでは無い。
幸福に生きられるのならば、愛しく想う心だろうが、共に在れるからこそ鼓動を刻める命だろうが、いくら踏み躙られても、八つ裂きにされても、くれてやっても良かったんだ。
むしろ、喜んで差し出した。
なのに、どうしてそんな表情で笑うの?
瞳は夕焼けを映してキラキラと光っているのに、まるで涙を浮かべているみたいに。
あの日のあの子みたいだ。
とても苦しそうに、酷く辛そうに笑うから、それが凄く悲しくて悔しい。
自由と幸福の中に、逃してあげられやしなかったんだと。
笑みと共に告げられた事に、ああ…、
『 』
と思い、己という意識は途切れた。
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