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優しい人
「ぅっ……っ」
声を殺して泣く支給品に、
「まぁた、食べられなくて泣いてんの?お前は」
呆れて声をかければ、首を横に振り、
「優しい人なのに、俺、何も出来なかったから」
くたばって床に横たわった爺さんに、孫のように菓子を貰ったり、遊んで貰ったりして可愛がられていた支給品は、随分と絆されたものだ。
「優しいったって、こんな風に殺されるんだから、後ろ暗い事が何かしらあるんだろ。いちいち気にしてちゃあ、飯を喰っていけやしないよ」
爺さんが支給品にやるついでに、自分にもくれた飴を口の中に放り込んで転がす。
暑いからなと言ってくれた飴は、塩辛い。
「違う、貴方が。優しい人だから、こんな事させたらダメ」
「はぁ?馬鹿な事言ってないで、さっさと自分の役割果たしてくれる?失敗作」
失敗作と呼んだ支給品の顎を、片手でぎゅむっと鷲掴みにして、持ち上げる様に両頬を挟んで引っ張って、死体へと向かせる。
「うっ……」
「出来ないって言うんなら、処分品行きだよ」
嘘だけど。
支給品は、作製者が失踪したとか、死んだとかで、今、足りて無いのだ。
それなのに、先日故意に、では無いが、大破させて大目玉だ。
だから、こんな失敗作を回されてきたのだ。
失敗作は躊躇しながらも、死体の喉の部分の柔らかそうな所に噛み付いた。
あの死体は柔らかな声で、失敗作の偽名を呼んで頭を撫でていた。
一口、噛みちぎっては、吐き気を堪えながら咀嚼して呑み込めば、首輪の青い石が光って死体を包み、目の前の死体は光の粒子となって支給品の首輪にぶら下がる青く美しい石に吸い込まれてしまう。
青い石とは言ったが、石なのは外側だけで、中は液体である。
美しい色をして輝くのは中の液体。
中の液体はこの国の中心にある、湖から汲んだ水が材料となっているらしい。
支給品にとっての大切な動力源。
これが無いと活動できないのだ。
取れると永遠に動かなくなる。
高値で取引される聖なる水の入った石、略して聖石。
支給品は、支給品によって色の異なるこの石を、より美しく輝かせる為に、国が支配して運営する組織の戦士たちに支給され、死体を一口取り入れればエネルギーに出来、石を輝かせ、最期に石を回収されて役目を終える。
支給品の人権なんてない。そもそも支給品は。
「終わったね、じゃあ、帰るよ」
不細工で汚い泣っ面なんて、これ以上見たくなくて、背を向けて歩き出せば、失敗作は、
「あ、待って、ライトっ」
「もう、そう呼ぶなって言っただろ」
禁じた呼び方をされて、苛立ち紛れに駆け寄る失敗作の腹に、振り返り様に蹴りを入れた。
相変わらず、これで何故戦闘職じゃ無いのかと不思議なくらい頑強な体格をしているから、吹っ飛びはしないが、しっかりと蹴りが入ったおかげで蹲って吐いている。
まあ、失敗作でも、支給品はもう生きていた頃とは色々と違って、吐いても涎くらいで、今食ったものは何も出ないし、外だから良いのだけど。
ただ、野郎の吐く所など見たく無い訳で、
「汚いなぁ」
そう冷たく吐き捨て、それ以降振り返る事なく、さっさと家へと向かった。
わざわざ全く似ないように、髪や目の色を変えなくたって、綺麗だなんて、愛しいだなんて思うわけ無いのに。
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