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目の前の獣達は、まだまだ戦意を失うことなくこちらを睨み付けている。
「スカイ! 獣の気を引いて!! ラズ達はこっちに!」
デュナの声に弾かれるように、スカイが獣達の間に突っ込む。
私の正面の獣が、私から視線を外すやいなや、フォルテの腕を掴んでデュナに駆け寄る。
デュナの足元には三匹の獣が黒焦げになっていた。
「以上の構成を実行!」
デュナの声に、私達と獣達を隔てる見えない壁が生まれる。
障壁だ。
障壁の向こうから、ガチャンという音がくぐもって聞こえたかと思うと、次の瞬間、爆音が響き渡った。
爆風も、土煙も、目の前の壁に弾かれ左右に流れてゆく。
轟音に混じって聞こえてくる、獣達と、スカイの断末魔。
「「スカイ!!」」
私と、フォルテの声が重なった。
まだほんの少し朝の匂いを残した空気に、思いのほか早く土煙が収まってゆくと、地面にはところどころが吹き飛んだ黒い塊がいくつも落ちている。
その中には、デュナが投げ込んだらしきフラスコの破片もあった。
ガラスがあちこち融けかかっているところを見ると、爆心地は相当な温度になっていたようだ。
スカイは、髪こそ鮮やかなブルーだが、服は森に紛れる緑で、肘上からあるロンググローブ、ブーツ、クジラのバンダナに至っては黒づくめだった。
この黒い破片の中に、彼の欠片が混ざっているのではという考えが頭を掠めたとき、少し離れた場所から大いに咳き込む声が聞こえた。
それと同時に目の前の壁が霧散してゆく。
「ちょっ……ねーちゃんっっ! こういう事はやるならやるで事前に一言……っ」
そこまで一気にまくし立てて、またげほげほと苦しそうにむせる。
どうやら爆煙を多少なりとも吸ってしまったらしいスカイが、ふらふらとやってくる。
服のところどころが焦げているのがここからでも確認できた。
「言わなくてもわかってるじゃない」
悪びれるそぶりもなく言い放つデュナに、スカイはその場でがっくりとうなだれた。
肩で、まだ大きく息をしながら咳き込んでいる。
フォルテがトコトコと駆け寄り、「大丈夫?」と心配そうに背中をさすった。
獣にやられたのであろう、切り裂かれた痕が肩や足に残っている。
傷を癒す為、神への祈りを唱えながら、スカイに近付く私に、デュナが声をかける。
「浄化も一緒にお願いね。あの煙、有害物質の塊だから」
「ねーちゃんっ!!」
スカイの抗議の声に、デュナがぴくりと眉を上げる。
「一度ならず二度までも……」
そのままツカツカとスカイに近付くと、スカイの耳をつまんで引き上げる。
「いでででっっ」
「外では、名前で呼ぶように……言ってあるわよね……??」
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