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私も、スカイも、家に居る頃はずっとデュナを姉と呼んでいたのだが、こうやってパーティーで外をうろつくようになって、そう呼ばれることで見知らぬ人にまで自分が一番老けていると気付かれる事が我慢ならなくなったらしい。
私には、まだよくわからない気持ちだが、デュナくらいの歳になると分かってくるものなのだろうか。
それはそれで、遠慮したい気もする……。
途中で途切れてしまった祈りの言葉を、もう一度はじめから唱え直す。
神官達の使う魔法=奇跡の力等と呼ばれるそれは、私やデュナの使う魔法=魔術に比べとても単純なもので、資質のある者なら正確に祝詞さえ唱えきれば発動できるーーのだが、如何せんその祝詞が長すぎると思う。
口に出さねばならない事もまた厄介で、正確な祝詞を覚えていても、噛んでしまうと役に立たない。
もしかしたら、神官見習い達の修行には、早口言葉の練習があったりするのではないかと本気で考えながら、治癒術をかけた。
「ありがとな」
スカイが、屈託の無い笑顔で顔を上げる。
浄化が効いたのか、苦しそうな息も治まっていた。
「こちらこそ、さっきは助かったよ、ありがとね」
私が答えると、フォルテも慌てて
「私も……。ありがとう、スカイ、ラズ」
と嬉しそうに私達を見上げる。
焼け焦げた地面で、あれこれ何かを収集しては、試験管やシャーレに詰めていたデュナが、満足そうにこちらを振り返った。
「さあ、帰るわよー」
きっとまた、デュナは、今日拾った何かで怪しげな薬を開発しては、スカイに飲ませるに違いない。
そして、私はそれを浄化することになるのだろう。
そんな確信にも似た思いを胸に、すっかり得意になってしまった浄化の祝詞を思い浮かべつつ、私達は町へ戻った。
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