2.少女の依頼

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固まってしまったまま、みるみる赤くなっていくフォルテ。 「私、ミリィって言うの。はじめまして、よろしくね」 フォルテより、歳も背も小さな女の子がハキハキと自己紹介をする。 その子によく合う、可愛い名前だった。が、ここはフォルテに返事をさせるべきだろう。 私が口を出すのは、もうちょっと後に……、と思うのだが、当のフォルテは固まったままである。 スカイが優しく声をかけた。 「ほら、フォルテ、挨拶してごらん。俺らがついてるからさ」 ぎくしゃくとした動きで、微かにスカイに頷いたフォルテが、そのまま私の顔を見上げてきた。 ニッコリと出来る限り優しい笑顔を向ける。 この子が頑張れますように。精一杯の祈りを込めて。 ほんの一瞬、ホッとしたような顔をして、フォルテがミリィに向き合った。 「…………わ……、私……その……」 途端、バターンと豪快な音を立てて、薬屋の扉が開け放たれた。 「うふふふふふふ……」 扉の向こうで、仁王立ちのデュナがなにやら怪しげな笑いを洩らしている。 その表情は、メガネの反射に遮られ、読むことが出来ない。 フォルテはというと、突然の音に驚いて、すっかりマントの後ろに戻ってしまっていた。 「おいおい、ねー……じゃない。デュナ! いきなりそんな思いっ切り扉開けたら危ないだろ!!」 扉は内外両方に開くタイプだったが、今回は思いきり外に開かれている。勢いが良すぎたのか、扉が戻って来ていない。 私達は、たまたま扉の当たらない位置に居たが、もしそうでなかったらと思うと、確かに空恐ろしかった。 デュナはそんなスカイの声を全く無視して、高らかに声を上げた。 「さぁ、美味しい物食べに行くわよー!」 足元では、ミリィがぽかんとデュナを見上げている。 そんな少女とその母親に、スカイと私でそれぞれ頭を下げて、さっさと歩いて行ってしまったデュナの後を、私達はバタバタと追いかけた。 薬草集めで貰える報酬は、はじめから決まっていた。 八百ピース。四人で美味しい物を食べれば、それだけで消えてしまう額だ。 先ほどの戦闘でデュナが投げた二本の薬瓶……それぞれの薬品を混ぜることにより爆発を起したのだろう。 爆発跡にはフラスコの破片が二本分あったように見えた。 その経費を回収するためには、お昼は美味しい物というよりも、安くて、不味くない物で済ませなくてはならないはずだった。 デュナは、冒険にはおよそ不向きなヒールの高い靴で、軽快に私達の前を歩いている。 後ろから窺い見る限り、その機嫌は、すこぶる良いように見えた。 やはり、あの薬屋で値段の交渉でもしたのだろうか。 実際、薬草を渡して決められた金額を受け取るだけにしては、時間がかかりすぎていた。 とにかく、デュナに聞いてみるのが早いかと、足を速めたその時、彼女がピタと立ち止まった。
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