赤に染まった駄作でも

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「え?」 「言った通りです。私の秘密を教えてあげます」  そういうと西岡はナイフを僕に渡して、目線を明確に合わせた。その目に殺意は無くて、何処か諦めを含んでいた。 「私が殺しを始めた理由は、人を殺したくなったからなんです。報いとか復讐とかはどうでも良くて、人から流れ出る血の美しさに、恋焦がれてしまっただけなんです。小動物へのキュートアグレッションから始まった殺意は、いつの間にか大きくなって人でしか満たされないようになってしまいました」  西岡は涙を流して、話を続ける。まるで救いを求める罪人の懺悔のように、言葉が止まらない。 「でも1人目を殺してしまった時に、私はこの罪の大きさに耐えられなくなってしまいました。投降しようと思って歩いていると、私の大嫌いないじめっ子が私の前に現れて、それで喧嘩になったんです。私は持っていたナイフで脅して、そのままなし崩しに殺してしまいました。そのまま私は自殺しようとしてナイフを首に当てました。そうしたら先輩が目の前に現れて、情けなく震えていたんです」  彼女は自殺しようとしていた。その時に現れたのが僕だったのだ。 「私は先輩と罪を共有しました。そうしないと、私の心が砕けてしまうから」  西岡は僕が右手に持っていたナイフを掴んだ。 「私を殺して。罪を裁く裁判官の様に断罪して。正当防衛にして私に全てやらされた事にしたら、先輩は助かります。遺書にも、そう書き遺しておきましたから」  握る手が血に染まっていく。ナイフの持ち主である西岡に復讐するように、容赦なく手を傷つけていく。 「西岡……」 「どうせ警察に捕まる身です。先輩になら殺されても、後悔は無いです」  僕は秘密を明かす決意をした。バッグの底の秘密のポケットに入れておいた、2粒の錠剤を晒した。
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