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「やめて……こんな事して、何になるのよ!?」
「私と先輩が貴方の悲鳴を肴に酒を飲む事が出来ます」
「俺を異常者扱いするな」
ナイフが頬を掠めて、鮮血を見せていた。
「助けて……ねえこんな事して何が楽しいの。そんなとこで傍観してないで、助けてよ……この、人殺し。許さない、許さない……!」
西岡から5歩離れた所でコソコソ見ている僕を見て、クソ同級生さんは暴言と悪罵を止めない。
「ひっ……!?」
「先輩への悪口は駄目です」
クソ同級生さんの前にナイフが突きつけられる。あと1歩踏み込めば刺さる距離だ。
「最後に言い残す事は?」
「あ、ああ……私は」
「言わせる気は、無いんですけどね」
ナイフが喉に入る。喉を潰されて悲鳴すらあげられない。そのまま西岡は無表情のまま、腹部を刺し続けた。大動脈が損傷したのか、噴水の様に血が吹き出した。肉体の痙攣が始まって、生者が死体になる製造過程をこれでもかと見せつけられた。
「ふう」
「終わったか?」
「ええ。滞りなく。ここには人が滅多に来ませんし、森の方に隠しておけば暫くは見つかりませんしね」
彼女は熟練の職人の様に呟くと、ウエットティッシュで手を拭き出した。
僕は4歩近づいて、死後1分未満の新鮮な死体を眺めた。顔は苦悶に歪んでいて、未練タラタラな様子だった。
「可哀想に」
「白々しすぎて笑えますよ。それに止めなかった先輩も、多分憎悪の対象ですよ」
西岡は替えの着替えに身を包むと、ナイフをナップサックにしまった。
「今日はこれまでですが、一応聞いておきますか。先輩の憎む人、教えて下さい」
「……僕の夢を笑った、あいつだ」
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