赤に染まった駄作でも

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「許さないわ!」 「こんな事して何もねえと思うなよ!?脅しなら許さねえぞ!」 「やめてよ……謝るから、許してえ!」  僕の夢を嘲笑った同級生も、祭りの日にジュースをぶっかけられて拳を振るってきた馬鹿みたいな大人も、人の揚げ足ばっかりとって西岡の心に深い傷を負わせたいじめの主犯格も、1人残さず地獄に落とす事が出来た。皆して「許さない」ばっかり言っていて、ちょっと笑えた。  正直言って楽しい事ばかりでは無かった。反抗されて取り逃しそうになった事もあったし、こっちが傷を付けられる事もあった。 「それすらも、思い出になるよな」 「何独り言を言っているんですか?」  学校が夏休みを迎えても、僕達が『部活動』として集まる時間はいつも通りだった。午後4時半に、部室へと向かう。いつもならそこで口紅を持った西岡が次の標的の話をするのだが、今日は違っていた。 「そろそろ私、捕まるそうです」 「え?」 「いや、前に森で殺したクソ同級生が偶然にも見つかったらしくて、今検死されているんだとか。慢心が仇になりましたね」  そりゃ、いつかは終わりが来るだろうと思っていた。でも今日だとは思わなかった。でも西岡は微笑んで、口紅を懐にしまった。 「捕まるのが、怖くないのか?」 「別に怖くないですよ。あれだけ殺して報いが何も無いなんて思ってませんし」 「お前って、意外とまともだったんだな」 「先輩の方がイカれてますよ、きっと」  互いに笑みを交換する。警察が来るなんて事はどうでも良くて、今は西岡の笑みを見つめているだけで幸せになれた。 「今日は殺しに行くより、映画が見たい気分です。今日の担当は先輩でしたよね?」 「ああ、一応持ってきているぞ。クソみたいな駄作だけど、いいか?」 「おお、今の私たちにぴったりな映画ですね。是非観ましょう」  僕は2度と触れることは無いと思っていたDVDに触れて、プレーヤーに入れた。
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