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11話 なんで…?
今日は朝からあまり体調が良くなくて、カフェのバイトを店長命令で早々に切り上げられてしまった。
携帯もなんも持ってないから、紫雨さんに連絡することも出来ずとぼとぼと家に帰り、いつも通り玄関を開けてただいまぁと声を上げたが奥からの反応はない。
きっと集中してるんだろうとそぉっとリビングの扉を開け、寝室に繋がる執筆部屋の引き戸を開けようとしたその時…
中から耳を疑うような艶めかしい声が聞こえてきて、思わず手を止めて立ち尽くした。
「あっ、うっ…あっ、大樹っ…」
「めっちゃ締まるやんっ…せんせっ」
「んっ、あっ、、イクッ…イクッからっ!」
「おんっ、イキやっ…」
「あぁっ、…っあ、イクッ…」
嘘だろ…大樹くんと紫雨さんが?
そおっと引き戸を開けるとそこには、はぁはぁと息を上げながらも気持ちよさそうに天を仰ぎ腰をうねらせて、大樹くんに手を回している紫雨さんがいた…
大樹くんが言っていた事が本当なら、紫雨さんは大樹くんの事は好きじゃないから平気ってこと?
けどそんな事…嘘かホントかもわかんないっ…
あんな気持ちよさそうによがって大樹くんを求めるなんて俺の時と全然違う…
俺じゃあんな風にしてあげられない…っ。
悔しくて悲しくてこの場から逃げたいのに、二人の行為から目が離せなくて、その場にしゃがみこみ引き戸の隙間から覗き続けた。
紫雨さんがイッた後も、大樹くんは執拗に紫雨さんを揺さぶり唇を重ねながら、お互いの舌が行ったり来たりを繰り返りかえす。
そして大樹くんが紫雨さんの中を突き上げ、グチュグチュと卑猥な音を立てる度に、二人の嬌声が響き俺の下半身は熱を持ち疼くのに、心の中はぐちゃぐちゃにかき乱され目からはポロリと涙が溢れた。
「んぁっ、もっ、だめっ!大樹っ!」
「まだまだ出来るやろっ、なぁっ…こんなんじゃ足りんやろっ!」
「あ、ぅっ…あっ、きもちぃっ…」
「せやろっ、くっ…でそっ…」
「はぁっ、あぁっ、、俺もっ…イクッ…」
「あぁっ、紫雨さんっ、イクッ…」
気持ちいいんだ…
俺とじゃ気持ちよくなれないもんな。
床にぽたぽたと涙が零れ落ちていたことにも気が付かず、そっと引き戸を閉めてダルい体を持ち上げ外に出ようとしたその時、突然家のチャイムが鳴った。
俺は外に出る訳にもここにいる訳にもいかずに、とりあえず廊下に出て目に付いたトイレに慌てて駆け込んだ。
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