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母の心の底
高林さんの家だって、小学生の低学年と高学年の、それも娘に手を付けた家の子供を預かるのなど、反対したに決まっている。
母には、こういう、恐ろしいところがあった。
とにかく、自分の気に入らないことは【ゆるさない】のだ。
父と高林さんの話し合いをさせるだけではなく、高林さんの娘さんも悪いのだと、暗に思っているのだ。そこで、晴美と雪美をわざわざ話し合いの時間に高林家に預けたのだ。
それも、わざわざ、夕食時を話し合いの時間にして。
それがわかったのは、母が、おにぎりでもなく、白いご飯を小学生の姉妹では食べきれないほど大きなタッパーに詰めて、
「高林さんの家でおかずなんてもらっちゃいけないよ。二人だけでご飯を食べなさい。」
と、白ご飯だけをもって行かされたのだ。
いつもだったら、外で食べるときには必ずおにぎりにしてくれるのに。
高林さんの家を訪ねる事さえ、気まずいと思うのは、小学生でもわかることなのに、その上、よそのお家でタッパーに詰められた白ご飯だけを食べるなんて、拷問に近かった。
さすがに高林さんの家の人も、
「一緒に食べよう。おかずも食べていいよ。」
とは言ってくれたが、乗り気でないのはこちらにもわかるし、もし、母のいう事を聞かなかったことが母にばれたらとても怖いことになると知っていたので、
「おかあさんに、ご飯だけ二人で食べなさいって言われていますから。」
そう断り、高林家の一階は小さな居間が一つだけの作りだったので、晴美と雪美はしかたなく、階段の途中に座り、白いご飯を少しだけ食べた。たくさんなんて、食べられる雰囲気ではなかったし、涙も出てきたから食べられなかった。
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