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ある小春日和の午後、帰宅した山本氏は中折れ帽と上着をポールハンガーに掛けると、居間のソファに腰かけた。
家政婦の須田が、盆を片手におかえりなさい、と言って、テーブルの上に羊羹と濃いコーヒーを置いた。
「どうもありがとう」
「いえ。でも、山本さんはお若いのに、おやつの好みが昭和ですわね」
「僕、ぎりぎり昭和生まれなんでネ」
「もっとこう、カヌレとか、台湾カステラとか、飲めるわらび餅とか」
「そういうはしゃいだの苦手なんだなア。お茶は、落ち着いて楽しみたいの。
でも須田さん、よく知ってるね」
「孫がちょうどそれではしゃいでいるものですから」
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