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山本氏は、散歩から帰ってきた。
空は青く、風もなく、程よく乾燥した空気に晒された柿の実や柚子の暖色と、雲の白。
パソコンに向かい原稿を書く日々のなかで、ほんの一息つく貴重な時間。
居間には細かい花柄の景徳鎮、翡翠を彫って作られた舞う美人像、ロイヤルドルトンの深紅のゾウ、などが置かれている。
隣の部屋と、あと三つの部屋にはもっと、それ以上の数の骨董が収まっている。
先祖から受け継いだこれらの品を売ることもなく、家政婦の須田とともに手入れをしながら守り続けている。
ウェブライターとして骨董の記事を書いている山本氏の家には、近くの美術大学の学生や教授たちが、取材や見学に時々訪れる。
一人で来るのもあれば、ゼミやクラス単位でぞろぞろ来るのもある。
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