夏の夜の夢

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 私は、胸くらいの深さのところで泳いでいた。波が来るたびに体が浮き上がり、足が海底に着かなくなるのが分かった。泳ぎが得意だったので、かえってそれが楽しかった。  そうして遊んでいるうちに、近くで「きあーっ」という女子生徒の叫び声が聞こえた。 見る見る一人の女子生徒が沖へ流されていく。 誰かが「助けて、大人を呼んで来て」という声とともに何人かの生徒が大声を上げている。  私は、考える間もなく女子生徒を助けようと沖へ向かって泳いだ。  彼女は手をバタバタしながら波間に浮き沈みしている。梨香だった。何とか彼女に追いつき手を伸ばした。彼女は、私の頭と言わず顔や肩に手をかけ必死にしがみついてきた。これでは到底、私もまともに泳げない。  海の底に引きずり込まれそうだ。私は、立ち泳ぎの要領で足だけで泳ぎ、何とか息継ぎをしながら岸を目指した。  海水を幾度か飲んだが、ある瞬間に足が海底に着くところまで来たのが分かった。これで助かったと思った。  引率の大人が駆けつけて彼女を介抱した。 大量の海水が口に入ったが大事には至らなかった。
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